取材日:2024年5月22日
2023-24シーズン退団選手インタビューPart.7 中 孝祐
鍛え抜かれた鋼の肉体を持ち、チーム公式SNSで「筋肉キャラ」としてお馴染みだった中 孝祐選手。昨シーズンは3試合に先発出場し、今シーズンさらなる活躍が期待されましたが、プレシーズンでの怪我の影響もあり、なかなか思うようなパフォーマンスが発揮できなかったと言います。中選手にとって、コベルコ神戸スティーラーズに在籍した4シーズンとはどういうものだったのでしょうか。また、学んだこととは。話を聞きました。
中 孝祐
KOSUKE NAKA
PROFILE
- 生年月日、出身地/1997年5月6日生まれ(27歳)、奈良県生駒市出身
- 経歴/OTJラグビースクール→東海大学付属仰星中学→東海大学付属仰星高校→関西学院大学
- 入団年次/2020年
- ポジション/WTB
- 身長・体重/177cm・86kg
- 2023-24シーズンまでのチーム公式戦出場回数/5
「悔しさを感じることも多かったですが、幸せな4年間でした。この経験を活かして大きくジャンプアップできるよう頑張ります」
4シーズンを振り返って、どうでしたか。
「いろいろなことがあった4シーズンでした。1年目は有名選手ばかりで、コーチ陣も外国人が多いという環境になかなか馴染めなくて。練習でも縮こまってしまい、ミスをしたくないからボールを受けたくないと思うこともありました。自分らしさを出せないままシーズンが終わってしまったのですが、2年目になり、徐々にその環境にも慣れていき、気後れせずにプレーできるようになりました」
2年目のシーズン、意識が変わるようなきっかけがあったのでしょうか。
「プレシーズンマッチでプレータイムをもらって、フィジカルなど通用すると感じられたことが一番大きかったと思います。1年目と比べるとフィジカルも、スピードも成長できて自信が付き、コーチ陣とも気軽に話せるようになりました」
実際、2年目のシーズンは2試合に出場しました。
「デビュー戦は第4節埼玉パナソニックワイルドナイツ戦なのですが、開幕戦のシャイニングアークス東京ベイ浦安(現・浦安D-Rocks)戦でリザーブに入ったんです。ただ、その試合は最後の最後まで拮抗した展開で出番がないままノーサイドを迎えました」
開幕戦からメンバー入りすると思っていたのでしょうか。
「まったく思っていなかったので、チーム内でメンバーが発表された時はとても驚いたことをよく覚えています。試合の日は、東海大学付属大阪仰星高校でプレーする弟が全国大会の決勝戦を戦うことになっていたので、メンバー発表の時にメディアから取材を受けて、僕もデビューして『中家の記念日にしたい』と意気込んだんですけど(苦笑)。今となってはそれも良い思い出です」
3年目のシーズンは、3試合に先発出場しましたね。
「NTTリーグワン2022-23第6節vsトヨタヴェルブリッツで初めて先発出場しました。あの試合はとても印象に残っています。試合前からワクワクして、気合が入っていました。ただ、それが空回りして、最初のタックルで頭を打って脳しんとうを起こしてしまって、早々に交代することになって…。最後までグラウンドに立っていられず残念でしたが、『14番』を付けて初めて出た試合は忘れられないですし、3年目は手応えを感じられたシーズンです」
1年目から順調に成長を遂げているように思えたのですが、今シーズンはなかなか出場機会が巡ってきませんでした。
「8月からの始動にあたり、オフシーズンは設定されたフィットネスやフィジカルテストの目標数値をクリアしようと取り組みました。テストでは、これまでで一番良い数字が出たんです。良いシーズンになると思っていたのですが、プレシーズンマッチがはじまる週に膝を怪我してしまって、3週間ほど離脱することになりました。遅れを取り戻そうと必死で取り組みましたが、なかなかパフォーマンスが上がらなくて。そのまま試合メンバーに絡めないまま終わってしまい悔しさがあります」
高校では三冠(春の全国選抜大会、夏の全国7人制大会、冬の全国高校大会)を達成し、大学ではU20日本代表や7人制日本代表にも選ばれ、中心選手として活躍しました。神戸スティーラーズではうまくいかないことが多かったと。
「学生時代はずっと試合に出ていたので、メンバー外という経験は初めてのことでした。どうやったら試合に出られるのか悩むことも多かったです。ただ、この4シーズンを通じて、コーチ陣へのアピールの方法などがわかってきて。もともと僕は自分を表現するのが苦手だったのですが、それではいけないということがよくわかりました。もちろん、それ以外の面でも、スキルを使ってボールを運んでいく神戸ラグビーを経験し、キック、パスといったスキルレベルを上げることもできました。この4シーズンは悩んだり、悔しさを感じたり、うまくいかないことが多かったですが、神戸スティーラーズに入団したことは後悔していないです。子供の頃から好きだった神戸スティーラーズでプレーし、公式戦に出場することもできましたし、社員選手だった時に所属していた会社の部署の方々にも応援していただいて、幸せでした。今後はここで学んだことを活かして、大きくジャンプアップできるよう努力していきたいと思います!」
神戸スティーラーズには日本代表をはじめ、世界各国の代表選手が数多くプレーしています。プレーや姿勢など影響を受けた選手はいるのでしょうか。
「ベン・スミス選手と、アーディ・サベア選手ですね。2人とも人格者で、こういう人がオールブラックスに選ばれるのだと思いました。ベンダー(ベン・スミス)は同じバックスというところでプレーの面でも学ぶことが多かったですし、アーディは本当に良い人で!最初は怖そうだなと思いましたが、まったくそんなことはなくてロッカールームでも気さくに話しかけてくれて。アーディと一緒に試合に出たかったですね。ほかにも、日本人でも才能あふれる選手ばかりで、そういう選手のプレーを間近で見たり、話を聞いたりして、影響を受けました」
今後チームに期待することは。
「今シーズン、レンズ(デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ)が指揮官に就任し、チームは大きく変わりました。ラグビーの面でも成長し、特にアタックはどのチームにも通用すると思いました。子供の頃から憧れていたチームですし、強くあり続けてほしいですし、来シーズンこそ優勝を期待しています」
チームメイトにメッセージをお願いします。
「悔しいこともありましたが、楽しいこともたくさんありました。それはチームメイトのお陰です。シンタさん(林 真太郎)や今シーズン退団するゲンさん(池永 玄太郎)とは、毎日のように練習後、コーヒーを飲みに行き、いろいろな話をしたことも良い思い出です。それにシンタさんは、オンとオフの切り替えがうまく、グラウンドに入ったら周りに声をかけて引っ張って、すごいなと思っていました。同期の(松岡)賢太を含めたすべての選手に感謝しています」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「昔から応援してくださっている方も多いですし、応援も熱くて、Steel Matesはリーグワンで1番のファンだと思います。会場やイベント等でも声をかけていただき、嬉しかったです。皆様の前で活躍している姿を見せることができたら良かったのですが…。これからもラグビーを続ける予定ですので、神戸スティーラーズとともに僕個人の応援もしていただければありがたいです。4シーズン、本当にありがとうございました!」
子供の頃、ラグビーフェスティバルに参加し選手にサインをもらったこともあったという中選手。憧れの神戸スティーラーズに入団してからはうまくいかないことが多かったと言いますが、「後悔はしていないですし、幸せな4年間でした」と力を込めてくれました。中選手、ありがとう!今後の飛躍を期待しています。