close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

2016-2017 シーズン総括インタビュー

 取材日:2017年1月19日

2016-2017 シーズン総括インタビュー

ジム・マッケイヘッドコーチの指揮のもと、アタッキングラグビーを標榜し、トップリーグの戦いに臨んだコベルコスティーラーズ。前半戦で2敗を喫し、優勝が遠ざかる中、なんとか日本選手権の出場権を勝ち取ろうと奮闘するが、10勝5敗勝ち点48で4位という結果に。しかし、最終戦となったサントリーサンゴリアス戦では、全勝の相手に対し敗れはしたものの五分の戦い、来シーズンにつながるラグビーを見せるなど、手応えも。就任1年目のジム・マッケイヘッドコーチと5シーズンにわたりキャプテンとしてチームを率いる橋本大輝選手が、2016-2017シーズンを振り返る。

アタッキングラグビーのさらなる成熟を誓う。

ジム・マッケイ ヘッドコーチ

Jim McKay

さまざまな課題が出た就任1年目のシーズン

10勝5敗勝ち点48で4位という成績に終わりました。この結果に対し、どう思われますか?

「複雑な気持ちですね。良い試合もありましたし、NEC戦やクボタ戦のような自分たちのパフォーマンスを100%やり切ることができずに敗れた試合もありました。最終戦のサントリー戦は、何度も敵陣深くに入りながら、スコアにつなげることができず敗戦となってしまいました。皆、良いプレーをしていただけに、あの試合に関しては悔しさが大きい。トップチームとの試合ではチャンスが何度もやってくる訳ではありません。少ないチャンスをいかにものにするか。我々は攻めてはいましたが、得点につなげることができなかった。プレッシャーがかかる中で自分たちのラグビーを精度高くやり切り、いかに仕留め切るのか。そこにサントリーとの差があったと思います。また相手は、トップリーグを通じてコンスタントなパフォーマンスをした結果、全勝し、優勝しました。そういう意味では、我々はNECやクボタに敗れるなど、コンスタントなパフォーマンスができませんでした。今後は、パフォーマンスのムラをなくしていかないといけません」

敗れたパナソニック戦とヤマハ戦の感想をお聞かせください。

「この2試合は、我々の現状を突き付けられた戦いです。パナソニック、ヤマハとの差は歴然と感じました。プレッシャーがかかる中でのディフェンス、セットプレー、ハイボールのキャッチなど、技術的に上げないといけないことは多いですし、フィジカルの部分でも。勝利するために高めないといけないことは多いと感じました」

1シーズンを終えて、マッケイヘッドコーチが今シーズン、成長を感じた部分は?

「一番の成長はアイデンティティの部分。アタックするという意識を選手に浸透させることができましたし、他のチームにもコベルコスティーラーズはアタックのチームだと認識させることができました。実際、サントリー戦終了後、相手チームの関係者から神戸はもっともアタックしてきたチームだと言われました。それから、今シーズン、49人のスコッドから38人が出場しました。この中には初めてトップリーグの試合を経験した選手もいます。怪我人が出た中で、彼らの代わりに出場した選手がステップアップしたことは、来シーズンにつながります」

逆に今シーズン、見えた課題はどこでしょうか。

「ディフェンスです。NEC戦は4トライを獲りました。しかし敗れてしまった。普通であれば負ける状況ではありません。ディフェンスに関するスタッツを見ると、トップチームと比べて、すべてが低い数字になっています。今後はディフェンスにおいてクリアなポリシーを立てる必要がありますし、全員がそれを理解し遂行できるようにならないといけません。自分たちの成長できるところが明確になっていますので、来シーズンはディフェンスも多くの時間を割いて強化していきます」

セットプレーについてはどのように評価されていますか?

「トップリーグ16チームの中で、セットプレーは悪い方ではありません。ただヤマハ戦ではイーブンの戦いができましたが、サントリー戦ではプレッシャーをかけられてしまいました。どのチームに対しても、完全に相手を圧倒できるようなパフォーマンスができるようにしないといけません。良いスクラムを組むのではなく、相手を圧倒するスクラムを組めるようにしたい。すべてのエリアでのラインアウト、スクラムでプレッシャーをかけられるように、スキルを磨き、レベルアップさせていきたいですね」

1シーズン、一緒に仕事をした橋本キャプテンのリーダーシップは、マッケイヘッドコーチの目にどのように写りましたか?

「ファンタスティック!そのひと言です。彼はチームのことをよく理解していますし、チームの精神的支柱。また、グラウンドでのパフォーマンスについても、シーズン通して安定していました。彼は優れたリーダーシップを持っています。しかしながら、残念なことに、コベルコスティーラーズには、橋本のようなリーダー的存在になれる選手が少ないと言えます。そういう選手が今後、増えていってほしいと思いますし、我々もそういう選手を育てていかなくてはいけません」

選手、スタッフ全員一丸となって取り組む

4位という結果に終わりましたが、ファンの方からは、試合を見ていて楽しいという声がよく聞かれたシーズンでもありました。

「それはうれしいことですね。ラグビースタイルがアタッキングなラグビーにシフトチェンジしたことは、選手にとって大きな変化だったと思います。来シーズンも、もちろん、クリエイティブでイノベイティブなアタッキングラグビーを目指します。今シーズンのトップリーグでの1試合平均のトライ数は4.2。悪くはないのですが、トップチームに対しては、そこまでの数字を残せていないのが現実です。大きなプレッシャーがかかる状況で、どれだけ自分たちのアタックのシステムをやり切れることができるのか。それをどの試合でもコンスタントにできるようにしないと。良い結果を出して、ファンの方々を今シーズン以上にワクワクさせられるようにしていきたいと思います。来シーズン、我々にとって大きなアドバンテージは、また1からではなく、今シーズンの終了時点のところからスタートできます。今シーズン、積み上げてきたものを、さらに上乗せできるようにしていきたいですね」

ウインドウマンス前にお話を伺った際、目指すラグビーの完成度は50%と言われていましたが、最終的に何%になりましたか?

「65%くらい。実際の勝率も67%ですから。数字に現れています。それを100%に上げることができるよう、スタッフも、選手と共にチャレンジしていかないといけません。現状を確認し、フィールド内外で、選手、スタッフがひとつになって働き、前へ進んでいきたいと思います」

来シーズンの飛躍を期待しています。では最後に今シーズンも熱いご声援をお送りくださったファンの皆様方にメッセージをお願いします。

「応援、ありがとうございます(※日本語で)。皆様は16番目のスターティングメンバーです。全国どこの会場に行っても大きな声援をお送りいただき、その声から勇気、力をもらいました。皆様の期待に応えることができるよう、これまで以上にハードワークし、クリエイティブでイノベイティブなアタッキングラグビーを成熟させていきたいと思います」

優勝をしないといけないシーズンでした。悔しい思いを来シーズンにぶつけます。

橋本 大輝 キャプテン

Daiki Hashimoto

「マッケイヘッドコーチが目指すアタッキングラグビーに取り組んだシーズンでした。フォワードとバックスがリンクしながら、速いテンポでボールを動かす。そのようなラグビーに6月から取り組んできたのですが、第1節vsNTTコム戦や第2節vsパナソニック戦では、相手を見てしまい戦い方がぶれてしまって・・・。それでもNTTコム戦はなんとか勝利することができましたが、パナソニック戦はボールを動かすという自分たちのラグビーではなく、開幕戦でヤマハがパナソニックをスクラムで圧倒したことを受けて、スクラムで優位に立とうとするゲームプランで臨んでしまった。あの試合は、負けるべくして負けたと思います。その後、選手間でミーティングを重ねて、第3節以降はこれまでやってきたアタッキングラグビーで戦い、その精度も上がってきたのですが、第9節vsNEC戦は、ニック(イーリニコラス)の負傷交替も大きかったですし、相手にアタック、ディフェンス、ラインアウトなど、すべてを分析されていて、それに対応することができなかった。強みを潰された後のセカンドオプションがないという課題が出た一戦です。

ウインドウマンスでは、ディフェンスを中心に、アタック、セットプレーのレベルアップを図り、後半戦へと入りました。第14節vsクボタ戦はイシ(中島ヴァカウタイシレリ)のシンビン、怪我人、そして天候と、神戸にとって悪い条件が重なってしまった。それでも勝ち切らないといけない試合でした。ヤマハ戦、サントリー戦については、相手チームとのラグビーの成熟度の差が出てしまった試合です。今シーズンはアタッキングラグビーに取り組み、ある程度、形はつくることができましたが、深みを出すまでに至りませんでした。

平尾GMが亡くなり、優勝しないといけないシーズンだったのですが、これまでと変わらない、4位という不本意な成績に終わり、悔しい思いでいっぱいです。来シーズンこそ頂点に立たないといけない!そのためには自分たちのラグビーを全員がもっと理解して、細部を突き詰めていかないと。もちろんセットプレーもブレイクダウンも、すべてにおいてもう一段階、二段階ステップアップしないといけません。そして、選手ひとりひとりのレベルアップも。選手全員が悔しい思いをしたシーズンです。この思いを来シーズンにぶつけたいと思います。ファンの皆様、今シーズンも熱いご声援ありがとうございました。来シーズンは良い結果を残せるよう、最善を尽くします。」

loading