close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

山崎基生選手インタビュー「来シーズンはこれまでとは違う自分を見せられるように」

 取材日:2017年2月2日

山崎基生選手インタビュー「来シーズンはこれまでとは違う自分を見せられるように」

2シーズン連続で全試合出場は、チームでただひとり。プロップでありながら、フロントローとは思えないスピード、ハンドリング、機動力を持つ。しかも本職の1番だけでなく、2番、3番でもプレーできるユーティリティさも。スクラムの最前列で体を張る山﨑選手が入部6年目のシーズンを終え、1年目のLO張硯煥選手とCTB林真太郎選手と共に3月上旬から2ヶ月間、チーフスへ派遣されることになった。その意気込みとは?今シーズンのパフォーマンスを振り返ると共に、今後の抱負などを聞いた。

山﨑 基生

Motoki Yamazaki

PROFILE
  • 1988年11月25日生まれ(28歳)、香川県高松市出身
  • 三田ラグビースクール→印西ラグビースクール→練成会→流経大柏高→流通経済大→神戸製鋼コベルコスティーラーズ (2011年4月入部)
  • ポジション/PR
  • 身長・体重/174cm・110kg
  • 2016-2017シーズンまでの公式戦出場回数54 (プレマッチシーズン2015を含む)

NZではフィジカルを成長させたい

チーフス派遣メンバーに選ばれたそうですね。

「ジム(・マッケイヘッドコーチ)からお前なら自信を持ってチーフスへ送り出すことができると言っていただきました。山中(亮平)、前川(鐘平)、中濱(寛造)、田邊(秀樹)といった同期が派遣されていたので、チャンスがあればと思っていました。若手が多く選ばれる中で、入部6年目でこのような機会をいただきうれしく思います」

1列目の派遣メンバーは、昨年の沢居寛也選手に続き、2人目です。沢居選手から話は聞いていますか?

「クラブチームは、フィジカルは強いけれど、荒削りだとか、いろいろと教えてもらっています。沢居の話を聞いているとスクラムよりフィールドプレーの方が得るものが多いのかなって。でも、実際に行ってみないと分からない。大学時代に合宿でニュージーランドやイギリスに行ったことがあるのですが、その時は試合しかしていないので、練習から向こうの選手と一緒にできるのがとても楽しみです」

ニュージーランドで成長させたいところは?

「フィジカルですね。誰とやっても当たり負けしないくらい強くなってチームに戻ってきたいと思います。数少ない派遣メンバーに選んでいただいたので、行く限りは自分自身のレベルアップはもちろんのこと、僕ももう若手ではないので、ニュージーランドで学んだことをチームに生かすことができるようにしたいと思います」

チーフスで認められたら、昨年の山下(裕)選手のようにスーパーラグビーでプレーできる可能性も

「そんなこと考えてもいないです(笑)。どんなスクラムを組むのか、まったく分からないので、そういう初めての組み方を経験するのもプラスになると思います。約2ヶ月間、頑張ってきます!」

スクラムの安定がこれからの課題

オフィシャルサイトの「武者修行日記」の公開を楽しみにしていますね。ところで、今シーズンも全試合出場(うち9試合先発)です。しかも6年目で初めて開幕スタメンとなりました。

「そうなんですか。あまり開幕スタメンとか気にしていないので。今シーズンはバズ(バジル・カージスS&Cコーチ)の厳しいトレーニングのお陰で、フィットネスの数値がかなり上がりましたし、それをグラウンドで出すことができました。また、これまでのディフェンス重視のラグビーからアタッキングラグビーにスタイルが変わって、自分の持ち味を発揮しやすかったというのはあります。個人的には手応えを感じられたシーズンとなりました」

セットプレーはどうだったのでしょうか?

「満足はまったくしていないです。良い時は良いけど、悪い時は悪いと、波がありました。毎試合、どんな状況であっても、同じようなスクラムが組めるようにならないといけない。スクラムの安定は来シーズンに向けて課題です」

今シーズン、全試合に出場し、どのチームのスクラムが一番強いと感じましたか?

「強さというか、まとまっている感じがしたのはサントリーですね。だけど、練習中に組むヤンブーさん(山下裕史)と(アンドリース・)ベッカーの方がどのチームより重い。腰がくだけるかと思うくらいなんです」

フロントローの先輩みんなに教えてもらった

普段の練習から鍛えられている、と。とても恵まれた環境だと思うのですが。

「そうですよね。すごく良い環境だと思います。もともと僕は3列目だったのですが、大学4年の時に1番に転向し、ほとんど経験がない中で入部したんです。大学時代はスクラムコーチもいなかったので、見よう見まねでやっていて。コベルコスティーラーズのフロントローは日本代表経験者ばかりですし、多くのことを学ぶことができました」

影響を受けた先輩を教えてください。

「一人には絞れないですね。入部当時はマツさん(松原裕司/現・釜石シーウェイブス)から組みながら教えていただきましたし、ラッシーさん(平島久照)は知識が豊富だし、スクラムも強いので、スクラムのポジションニングのことなど、今でもいろいろと教えていただいています。ヤンブーさんも強いですし、学ぶことばかり。フッカーをした時は、安江さん(祥光/現・三菱重工ダイナボアーズ)からも教えてもらいました。フロントローの先輩みんなに教えてもらって、助けてもらった6年間ですし、まだまだスクラムの安定にはほど遠いので、これからも教えてもらって成長していきます」

本職は1番ですが、トップリーグ初先発は3番で、なんですよね(2013-2014シーズントップリーグ1stステージ第3節 vs NTTドコモレッドハリケーンズ戦)。

「入部3年目の時ですね。それまで3番はやったことがなかったのですが、カンビー(カンバランドコーチ)の提案でチャレンジさせていただくことになったんです。トイ面が久富さん(雄一/NTTドコモレッドハリケーンズ)で、すごく強かったことを覚えています。3番はもう求められていないですし、やることはないですが、3番をやったことで、こうされると3番はイヤだとか、多少なり分かったように思います。あれはいい経験になりました」

ちなみに、フッカーでも先発出場の経験があるんですよね。トップリーグで1番から3番まで、すべてで先発出場をしている選手というのは、なかなかいないんじゃないですか。

「ギャリー(・ゴールドヘッドコーチ)が指揮していたシーズンは、安江さんが1番で、僕はフッカーのリザーブという起用が多かったですね。だけど、あの時、肩を故障していて、ラインアウトのスローイングが届かないくらい痛みがあったんです。安江さんにスローイングをお願いしたりしていました。そのシーズンが終わって、すぐに肩の手術をしたんですよ。2番はスローイングをしないといけないので、もういいです(笑)。2番も、3番も、ただできる、というだけで、高いレベルでできているのかと言われれば、どうか。1番でしっかりスクラムを安定させられるようになって、僕の持ち味はフィールドプレーなので、そこで他の1番の選手と差をつけたいと思います」

バスケットボールからラグビーの道へ

ところで、山﨑選手は5歳からラグビーをはじめてから、さまざまなポジションを経験されているんですよね。

「そうですね。小中学生の頃はバックスをしていました。高校から3列目をするようになったのですが、実は、小学校の高学年から中学3年間はほとんどラグビーをしていないんです。親が千葉県へ転勤して、そこで一応、印西ラグビースクールに入ったのですが、バスケットボールをはじめて、それからはバスケ1本だったんです。小学生の頃はミニバスケットボールの全国大会に出たこともありますし、中学は県大会で優勝しました。高校も千葉県内のバスケットボールの強豪校から推薦をもらっていたんです」

そうなんですか!ポジションは、『SLAM DUNK(スラムダンク)』でいうところの?

「桜木花道のポジション(パワーフォワード)ですね(笑)。ゴール下でリバウンドして相手を弾き飛ばしていました」

どうして再びラグビーの道へ?

「バスケは基本的に夏だけなので、冬場の体力づくりに土日はラグビーをしていたんです。それで、たまたま試合が流経大柏高のグラウンドであって、ラグビー部の顧問から声をかけられた。当時の流経大柏のラグビー部は、基本的に初心者ばかりで、誰でも声をかけるという感じだったんです。確か、鈴木(敬弘)さんも中学はサッカー部だったと思います。先生から粘られて、ついつい行きますと返事してしまって。バスケは好きでしたし楽しかったですけれど、中学で身長174cmとそれほど高くなかったですし、このままバスケをしていても、どうなのかなと思っていたところもあって。ラグビー部の顧問に誘っていただいた時に、いい機会だなと思い、ラグビーを選びました」

じゃあ、高校から真剣にラグビーに向き合い出したと。

「それまではラグビーのルールもポジションもよく分かっていなかったですね。流経大柏の顧問に声をかけられた試合でも、スクールの先生からとりあえず端に立っておけと言われて、ウイングの位置にいただけでしたから。高校の3年間で、めちゃめちゃ鍛えられました。練習時間は毎日5時間くらい。まず2時間ウエイトトレーニングをして、その後、スクラムとモールを3時間。プロテインも1日3回。お陰で体は随分と大きくなりました。ほんとキツかったですけどね(笑)」

でも辞めようとは思わなかった。

「1年の時は何度か辞めたいと思いましたが、仲間と一緒にやることが楽しかったですし、そのキツさにもいつの間にか慣れてしまって。高校のラグビー部の仲間とは今でも仲がいいですね」

そして大学でもラグビーを続けた。

「大学は高校のラグビー部に比べると厳しくないことを知っていましたから(笑)。大学時代で一番印象に残っていることは、1年の時に出場した(関東大学リーグ) vs 関東学院大戦。終了間際の3分だけ出場したのですが、清水(佑)さんにタックルにいったらぶっ飛ばされた。これまでの人生で、あれだけ見事にぶっ飛ばされたのは、あの時だけ。一緒のチームになってよかったです(笑)」

バスケ経験がフィールドプレーに生かされている

ほんとですね(笑)。大学では4年の時に3列目からプロップにコンバート、フッカーも大学時代に経験しているんですよね。

「フッカーはU20の時ですね。僕、ポジションに対して、こだわりがないんで(笑)」

いろいろなポジションを経験したり、バスケットボールしたりしたことはプレーに生かされているんでしょうか?

「バスケットボールをしたことが一番大きかったと思います。バスケは常にボールを触りますし、ステップも踏むし、その経験があったから、いろいろなポジションができたのだと思います」

山﨑選手と同じくフィールドプレーが長けている安江選手もバスケットボール経験者ですね。

「僕の経験上から、子供の頃は、ラグビーのほかにも、いろいろなスポーツを経験した方がいいように思います。プロップでも、サッカーをしていた選手はキックがうまいですし、バスケならハンドリングがいいです。子供たちには、ラグビーのほかにも、違う競技を経験してもらって、最終的にラグビーに戻ってきてもらえればいいかなと思いますね」

山﨑選手からラグビーをしている子供たちやその保護者の方へ提言ですね。では、最後に来シーズンの抱負を聞かせてください。

「うちのチームはみんな大人しいと思うんです。声を出して鼓舞するような人が少ない。ここ1、2年は、声を出してゲキを飛ばすことを意識してやっています。僕ももう若手ではないので、そういう声でチームを引っ張っていけるような存在になりたい。プレーの部分では、スクラムをもっと安定させて、フィールドプレーではもっとボールに絡めるようにしていきたい。来シーズンは、これまでとは違う自分を見せられるようにしたいです」

−来シーズン、さらに成長した山﨑選手を見られることを楽しみにしています。

loading