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ロングインタビュー

金井健雄選手インタビュー「コベルコスティーラーズを勝てるチームにしていく」

 取材日:2016年12月14日

金井健雄選手インタビュー「コベルコスティーラーズを勝てるチームにしていく」

サントリーサンゴリアスから今季、移籍のベテランフロントロー。大学時代には準優勝、8年間所属のサントリー時代には2度のトップリーグ優勝、日本選手権優勝に貢献。豊富な経験と1番から3番までこなす器用さで、即戦力としてプレーする金井選手に迫った。

金井 健雄

Tateo Kanai

PROFILE
  • 1984年11月5日生まれ(32歳)、群馬県太田市出身
  • 太田高校→慶應義塾大学→サントリーサンゴリス→神戸製鋼コベルコスティーラーズ(2016年入部)
  • ポジション/PR、HO
  • 身長・体重/175cm・105kg
  • 代表キャップ/4

強みは気合いと身体の強さ!

コベルコスティーラーズではフッカーでの起用ですが、サントリーサンゴリアスではプロップでプレーされていましたよね。

「サントリーではずっと1番でした。フッカーは大学以来です。スローイングも安定してきましたので、今は、久しぶりのフッカーを楽しんでやっています」

3番もできるそうですね。

「3番は高校時代にやっていて、1番から3番までできます。コベルコスティーラーズでは練習で一度3番をやった時に押されてしまったので、今後、3番はないなって。それに3番は高校以来と実戦から離れていますので、現実的に考えて、社会人では1番か2番かなと。1番であれ、2番であれ、基本的には1対1の戦いですから、目の前の相手に負けないために、どういう組み方で、どういう戦い方をするのかを考えてやっています。ただサンウルブズ入りを狙っているので、今シーズンはフッカーでしかアピールできていません。来シーズンはプロップでもプレーして、両方できるところを見てもらいたいですね」

金井選手の強みというのはどこでしょうか。

「気合いと身体の強さですね!」

確かに、イカツイ身体ですが(笑)。ファンの方々に見て欲しいストロングポイントをぜひ具体的に教えてください!

「フロントローは、セットプレー第一ですからね。そこは自信があります。それと身体の強さを生かしたタックルやボールキャリー。そのあたりを注目してご覧いただければと思います

まだまだやれるという思いから単身海外へ

ところで8年間在籍したサントリーからコベルコスティーラーズに移籍した理由を聞かせていただけますか?

「ベテランと呼ばれるような年齢になってきて、チームで要所要所でしか活躍できない状況になってきていたのですが、自分の中では、『まだまだできる』『まだまだやれることがある』と思っていました。それで、いろいろと模索した結果、チームを出て、もう一度挑戦した方がいいのではないかとなりました。それに、サントリーでは優勝も経験させてもらいましたからね。自分の成長のことだけを考えて、オーストラリアでプレーしようと、そして、次に所属するチームを強くしていけたらなと。そんなことを考えていたときに声をかけてくれたのが、コベルコスティーラーズだったんです」

コベルコスティーラーズに合流したのは7月半ばでしたよね。オーストラリアにはいつからいつまで滞在されていたのでしょうか?またプレーしていたチームについても教えてください。

「4月から7月まで、知り合いが2軍のコーチをやっているのもあって、キャンベラ・バイキングスというチームでプレーしていました。向こうではブランビーズのスタッフに交渉して、トレーニング施設を使わせてもらっていたんです。すべて自分で手配し、大変でしたけど、なんとかなるもんですね(笑)」

海外でプレーするのは、初めてだったのでしょうか。

「オークランド(ニュージーランド)にサントリーの合併した会社があるので、2014年3月から約2ヶ月間、短期留学をさせてもらったことはあります。午前中、出社して、午後から練習という感じで。その時に、試合をしたり、練習したりして、向こうの選手の身体の強さを体感できました。そういう経験もあり、とりあえずフィジカルの強い海外でラグビー修業してこようと思ったんです」

2度目のラグビー留学はどうでしたか?

「身体が強くていいなと思いましたね。日本人はどうしても技術でやろうとするけれど、私の中では、ラグビーというスポーツは、結局、身体が強いチームが勝つ。身体を張ってなんぼというか...。だから、日本で練習や試合をすると、もっと激しく来て欲しいなって。コンタクトするのはすごく楽しいですね」

オーストラリアでは、何試合に出場したんですか?

「バイキングスには1軍、2軍、3軍とコルツというU20のチームがあるんですが、最初は2軍のリザーブからスタートしました。そして、1軍のリザーブに入って、怪我人が出たこともあり、1軍の先発で5、6試合出場させてもらいました。11試合中、半分くらいは1軍で試合に出られたので、それは良かったと思います」

この3ヶ月間は金井選手にとって、どういうものになったのでしょうか。

「誰も私のことを知らない環境で、自己紹介して、プレーを認めてもらうところからはじめて。認めてもらえないと試合に出してもらえない。名前、経歴など、まったく関係がない実力社会で、怪我をしたら次がない。そういう厳しい状況に身を置いて、日本のラグビー界を外から見られましたし、向こうのラグビーにどっぷりと浸かって、ラグビーがさらに好きになって帰って来ました」

チームを良くするために経験を伝えていきたい

そして、心機一転、新天地に入部した、と。ちなみに、サントリー時代の、コベルコスティーラーズの印象は?

「ムラがあるチームだなって。イケイケの時は強いけれど、状況が悪ければ負けてしまう。その印象は、入ってからもあまり変わりませんね。コベルコスティーラーズは優勝した経験のある選手が少ないので、どれくらいまでいけば優勝できるというのが分からないのかなって」

ご自身が優勝を経験された時はどうだったんですか?

「こういう感じで試合をしていれば勝てるという自信はありました。逆算した練習をしていたというか、起こりうる状況はすべて練習していましたし。一番怖いのは、その選手の判断が、周りが経験したことがないということだと思うんです。日本人はアドリブに弱いというか。でも逆に、意思統一できると強い。そういう意味では、優勝した時は意思統一できていた。こうしたらいいのにな、こうしたら勝てるのになと思うことはあるので、今後、チームメイトにアドバイスできるなら、どんどんしていきたいとは思っています」

今はおとなしくしている?

「サントリー時代はよく発言していましたね。キャプテン以外が発言してはいけないということはないと思いますし、それに、それはチームをよくしたいという思いからですし。だけど、今は、まず自分のプレーをちゃんとしないといけない。自分のプレーでチームを変えられることがあると思いますので、そこをやっているところです」

サンウルブズ、代表入りを目指して

ところで冒頭、サンウルブズ入りを狙っていると言われましたが、個人としての目標はサンウルブズや代表入りということなのでしょうか。

「エディー(・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ)がサントリーの監督をしていた最後のシーズン(2011-2012シーズン)、膝を大けがし、出遅れてしまったんです。なんとかシーズンに間に合わせて、試合には出させてもらっていたんですが、パフォーマンスも良くなくて、もちろん代表にも入ることができなくて...。その時のくすぶった気持ちが、今でもあるんです。それが気持ちを切らさずにここまで来ているのかなって。もしすべてをやり切っていたら、今頃、サントリーで社業に専念していた可能性はあります。サンウルブズや代表が最終目標ではないですが、大きなモチベーションになっていますね」

ベテランとして、金井選手はどういう選手になりたいと思っていますか?

「即戦力というか...。うーん、例えば、アンディー(アンドリュー・エリス)のように、バーバリアンズに入って、南アフリカ代表と対戦しても、ちゃんと結果を出せるというか、いきなり他のチームへ行っても、求められるプレーができるようになれればいいなと思いますね」

2009年春に初めて日本代表に選ばれた時はどうだったのでしょうか。

「その時は、結局、雰囲気になれるだけで終わってしまって。2010年と2011年春も代表に呼ばれたのですが、試合に出せてもらえなくて、結局、ワールドカップ最終メンバーに入ることもできなかった。代表に行って、すぐに結果を出せなかったのは、自分の中で社会人のラグビーで終わっていて、世界を見据えていなかったんだと思います。ずっと日本代表に選ばれたいとは思っていましたが、海外のフィジカルの強い選手たちと戦う想定ができていなかった。なので、サンウルブズや代表に、今度、選ばれたら、結果を出せるようにしたいですね」」

次こそは、という思いが強いと。

「そうですね。代表だけでなく、チームでも、皆、一度はチャンスが来るんです。それを掴み取るのか、そうじゃないのか。ただ試合に出たいと思っている人は、そうなった時のことを想定できていない。でもそこから出続ける人は、その先のことを見ている。自分が試合に出て、こういうプレーをして、こう勝つという風にイメージが描けている。人間の能力はそれほど差がないと思いますので、違うのは環境と考え方かなと。先を見据えられる人になっていきたいですね」

いい環境に身を置くことで人は成長する

そういう考えは、いつ頃から持つようになったんですか?

「大学からですかね。僕は大学に一浪して入って、ラグビーを続けるかどうかも決めていなかったんです。入学して、やっぱりラグビーを続けようと。1年から出られるとは思ってもいなかったですし、それまでフッカーもしたことがなかったんですが、1年の時の大会でフッカーがいなくて、それから2番をするようになった。それで、先輩の怪我などがあって、Bチーム、そして、Aチームへと上がっていったんです。人は環境に合わそうとするので、高いレベルに身を置けば、いろいろと考えて、そこで勝とうとする。大学1年でチャンスをもらって、そこで掴み取れたことで、いい考えのサイクルに入れたのだと思います。サントリーでもそうですね。もともと社会人でもラグビーをやるかどうか、悩んでいて、銀行から内定ももらっていたんです。だけど、せっかく話をいただいたし、社会人でやれるならやってみようと。ただサントリーの2番には、青木(佑輔)さんがいましたので、最初から試合に出られるとは思っていなかったのですが、気がついたら1番になって、1年目から公式戦に出ていました」

試合に出られるように、いろいろ考えて努力し、そして成長してきた。

「そうですね。そこで出られる、出られないにかかわらず、できるだけいい環境にいって、ライバルのプレーを見たりして、勝てるようにするにはどうすればいいのか、考えながらやってきています」

金井選手は、考えるフロントローですね。ちなみに普段からラグビーの話をよくするタイプなんでしょうか。

「話しますね、基本的にラグビーの話や人生観になっちゃいますね(笑)」

では話は尽きないですが、最後にコベルコスティーラーズファンの皆様方へメッセージをお願いします!

「コベルコスティーラーズを勝てるようなチームにしていきたいと思っています。今シーズンの神戸のラグビーは面白いと思いますので、ぜひ会場で楽しんでください!応援よろしくお願いします」

ありがとうございました!

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