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ロングインタビュー

安井龍太選手インタビュー「目標は日本代表復帰と1日でも1年でも長く現役でプレーすること」

 取材日:2016年10月12日

安井龍太選手インタビュー「目標は日本代表復帰と1日でも1年でも長く現役でプレーすること」

今春、セブンズ日本代表の一員としてリオ五輪出場を目指した入部5年目の安井龍太選手に、セブンズ代表のこと、今シーズンのパフォーマンスについて、そして今後の目標を聞いた。

安井 龍太

やすい りゅうた

PROFILE
  • 1989年12月6日、京都府京都市出身。187cm・105kg
  • 京都市立西京極中学→東海大仰星高校→東海大学→神戸製鋼コベルコスティーラーズ(2012年4月)
  • ポジション/FL、LO
  • 昨シーズンまでの公式戦出場回数49(プレマッチシーズン2015を含む)
  • 代表キャップ 2

7人制で一番戸惑ったのはディフェンス

残念ながらリオ五輪に出場することは叶いませんのでしたが、春はセブンズ日本代表の一員として活動していました。代表に選ばれた時の心境は?

「これまで何度か打診はあったようなのですが、実際、呼ばれなかったので、オリンピックイヤーの今年に招集されるとは予想もしていませんでした。だけど、いいチャンスですし、7人制の経験は15人制にも必ず生きるはずだと思って参加しました」

それまで7人制の経験というのは?

「東海大が7人制に力を入れていたので、セブンズメンバーに選ばれると春シーズンは、通常の練習に加えてセブンズの練習もするんです。僕は3年と4年の時に、セブンズメンバーに入っていて、練習をしたり、大会に出場したりしていましたが、それも4年も前のことですし。コベルコスティーラーズに入ってからは、昨年7月のジャパンセブンズに出場したくらい。あの時はほとんど15人制の延長という感じで、ただ足の速いメンバーを集めただけ。それに練習も2、3日やっただけでしたから(笑)。代表合宿に参加した当初は、めちゃめちゃ戸惑いましたね」

特に難しかったのは?

「ディフェンスです。僕はパワープレイヤーといって、セブンズでもFW的なプレーをするポジションだったのですが、守る範囲が広い中で、身体を当てていくというのが難しかったです。何しろ相手はパススキル、ランニングスキルが高い選手ばかりですから。思い切りドミネート(※相手を押し返す)できるタックルなんて、まずできない。身体を当てれば負けることはないと思いますが、当たらせてもらえない。いかに抜かせないかというディフェンスをしないといけなくて。それが一番難しかったです」

どのような練習をしていたのでしょうか。

「今考えると、ずっと走っていました(笑)。15人制は、身体も当てないといけないので、ウエイトトレーニングを毎日してフィジカルを鍛えて、そして走れるようにトレーニングしますが、7人制はとにかく走る!セブンズ代表も、エディー・ジャパンの時と同じように、3部練習だったんですが、ウエイトトレーニングがない日もありました。早朝からパスなどのスキル練習をして、休んで、昼から1分間に200mを走り続けたりするセッションやフルコンタクトでディフェンス練習をしたり、チーム練習をしたりするセッションなどが2部続く。楽な日は、午前ウエイトトレーニング、午後ユニット練習でした。でも僕が一番驚いたのが、セブンズ代表って、試合の日の朝にがっつりフィットネス練習をするんです!3月の(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2015-2016第5戦)ラスベガス大会に出場したんですが、その時も、肺を広げるような感じで息を止めて走ったりして、それからウォーミングアップして試合に臨む。それはビックリしました。試合前なのに、こんなにやるかって(笑)。しかも1日3試合というのが、3日も続く。それほど試合に出ていなかったのに、めちゃめちゃしんどかったですね」

怪我をしてしまったことが悔しかった

2月の千葉県成田での合宿から参加して、すぐにラスベガス大会だったんですよね。

「ヘッドコーチの瀬川(智広)さんから国際大会を経験しておいてほしいと言われたんです。試合に出て分かったことは、ワールドレベルの選手は、速いし、強いし、上手いということ。リオ五輪で金メダルを獲得したフィジーとも対戦したのですが、フィジーはすべてにおいてレベルが高かった。オフロードでガンガンつないできて、何人おるねん!ってくらい味方が湧いてくる。あとオーストラリアも強かったですね。だけど日本も、ちょこちょこと動くので、相手にとってやりにくかったんじゃないかな。そういうことを体感できたことは良かったと思います」

合宿中に怪我をしたと聞いたのですが。

「香港セブンズ(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2016-2017コアチーム昇格決定大会)、(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2015-2016第8戦)シンガポール大会期間中、メンバー外は、JISS(※国立スポーツ科学センター)で練習をしていたんですが、そこでぎっくり腰になってしまって。それは3日ほどで良くなったんですが、その後、灘浜グラウンドに戻って調整している時に、また腰を痛めてしまったんです。そのまま沖縄合宿に入ったんですが、最初の数日は練習ができなくて。途中で復帰して、調子が上がってきたところで、タックルに入られた時に足首と膝をやってしまった。その沖縄合宿が、リオ五輪のメンバー選考の第一合宿だったんです。次が広島での合宿だったんですが、広島では一切練習ができなくて、なんとか試合には出たかったのですが、どうしても無理だった。最後のセレクションとなる北海道合宿でようやく復帰できて、巻き返そうと、できる限りやろうと、試合にも出せていただいたのですが、やはり走っていないですし、本調子ではなくて、アピールができなかった」

そしてリオ五輪の最終メンバーから外れてしまったと。

「五輪メンバーから外れてしまったことよりも、怪我をしたことが悔しかったですね。そこで怪我をしてしまう自分に対して悔しさを感じました。桑水流(裕策/コカ・コーラレッドスパークス)さん、ギャム(副島 亀里 ララボウラティアナラ/コカ・コーラレッドスパークス)といった同じポジションのライバルとは経験値の差もありますが、結果的に僕は7人制に順応し切れなかったのかなと思います」

ちなみにリオ五輪のセブンズ男子の試合は観戦されましたか?

「深夜だったり、早朝だったり、時間的に難しい時もありましたが、できる限り観ました。ラスベガス大会でもいい成績を残していたので、強いなとは思っていましたし、どこの国にも負けないくらい練習をしてきていたので、やってくれるだろうとは思っていましたが、まさかニュージーランドに勝つとは!ビックリしましたね。予想を超える活躍にただただ驚きました」

自分が輝ける場所は、15人制

次の2020年東京五輪を目指そうと気持ちを新たにしたとか。

「それはないですね(笑)。東京五輪よりも2019年を目指したい。僕が輝けるのは、7人制よりも15人制だと思います!」

フィットネス、スピードがありますし、十分、7人制でも通用するのでないかと思うのですが。

「15人制では武器になりますが、セブンズでは武器になるほどではないですね。フィットネスもセブンズ代表では標準くらい。みんな、すごい数字を出していましたから。7人制は僕より速いヤツ、上手いヤツ、強いヤツが五万といます。セブンズは突出した武器がないといけないですが、15人制は総合力で戦える。7人制で得たハンドリングスキルやディフェンスの感覚などを15人制で生かしていきます」

15人制で日本代表復帰を目指すと。

「個人の目標としては、日本代表です。そういう意味では、今回、発表されたスコッドに入ることができなかったのは、正直、残念でしたが、ここから巻き返します!そのためにはコベルコスティーラーズで試合に出続けて、優勝したいと思います!」

チームの話が出たところで、今シーズンも、開幕スタメンを勝ち取りましたね。2012年の入部以来、5シーズン連続となります。

「開幕スタメンは1つの目標だったので、それを達成できたことは嬉しかったです。特に今年は、セブンズ代表で活動していたので、チームに合流したのは6月下旬で、練習試合にも出場していなかったですし、ヘッドコーチが変わって僕がどういう選手なのか分からないという状況。それにマット(バンリーベン)も(谷口)到さんも好調だし、張(碩煥)くんも入部してきた。あと橋本(大輝)さん、前川(鐘平)さん、(伊藤)鐘史さん、(アンドリース)ベッカーもいる。バックファイブ(※4番から8番)は競争が熾烈だなって。これは相当頑張らないと試合に出られないなと危機感を持っていたんです。アピールできるのは、夏合宿期間中の試合だと思って、気合いを入れて臨んで、まずまずのパフォーマンスが発揮できた。特にスタメンだった三菱重工戦は、安江(祥光/OB、今季より三菱重工ダイナボアーズへ移籍)さんのお陰で(笑)、相手ラインアウトを5回ほど、スティールできました。安江さんのスローイングは分かっていますからね(笑)。それから開幕戦までの練習試合2試合でも必死にアピールしました。もちろん開幕スタメンだけでなく、全試合に出続けられるように練習から全力で取り組んでいます」

今シーズン、これまでのパフォーマンスを振り返って、ご自身ではどう評価していますか?また7人制の経験は生かされているのでしょうか。

「7人制を経験して、ディフェンスは気持的に楽になりましたね。それは実感としてあります。パフォーマンスに関しては、満足のいくものではないですね。ラインブレイクといった目立つプレーも、タックルミスをしないなどの目立たないプレーも、しっかりコンスタントにやっていきたいと思っているのですが、今はまだできていない。波なく、いいプレーをやり続けられるようにしていきたい。そういう選手が、首脳陣から求められたり、周りの選手に信頼されたりすると思いますので、そこを目指していきます」

1日でも1年でも長く現役でプレーする!

理想とする選手はいるのでしょうか。

「具体的にこの選手というのはないですね。橋本さんは日本で一番すごいフランカーだと思っていますが、僕は橋本さんとはタイプが違いますので。いろんな選手からいいところを見習いながら、パスもできて、走って、そこそこ(笑)スピードもあって、運動量もあるような万能なFWになりたいなと思っています」

ちなみに、入部当初と比べて、安井選手はラグビーに取り組む上で意識の変化などはあったのでしょうか?

「1年目は訳が分からない(笑)内に試合に出させてもらったという感じで。当時やっていた1Kという1000m走で1位になったら、それが評価されて。でも2年目の春に、エディー・ジャパンに呼ばれて、ラグビーが一瞬、イヤになるくらい精神的に追いつめられた。僕はそれまで明確な目標を持ってラグビーをやってきた訳ではないんです。でも、その頃からラグビーのこと、自分の将来、そういうものに対して向き合いはじめました。それでいろいろ考えた結果、昨年、社員からプロとしてやっていくことに決めました。実家が自営(※安井選手の実家は酒店を経営されています)ということもありますが、ラグビーにもっと専念したいとなって。僕はケツに火がつかないとやらないタイプなので、自分にプレッシャーかけていこうって。プロだったら試合に出続けないといけませんから。プロになった以上は、試合に出る、出ないで評価が変わります。だから今は、常に危機感を持って、試合に出るために、ラグビーを続けるためにはどうしようと思いながらやっています」

プロになって意識が変わった、と。

「そうです。僕はそれまでカズ(三浦知良)やイチローといった選手が現役にこだわり続けてプレーしている意味が分からなかったんです。華々しくプレーできる内に引退すればいいのにと思っていました。でもプロになってから、僕も1日でも1年でもいいから長く現役でプレーしたいと思うようになって。OBの伊藤剛臣さん(釜石シーウェイブスRFC)のように、40歳を越えてもずっと現役でプレーしていたいと思います」

目標は日本代表復帰と1年でも長く現役でプレーする、ですね!

「そうですね。怪我が一番怖いので、怪我をせずに、試合に出続けられるようにこれからも一生懸命頑張ります!」

ありがとうございました!

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