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ロングインタビュー

山下裕史選手 インタビュー

 取材日:2016年8月18日

山下裕史選手 インタビュー

「優勝と200試合出場を目指して、これからもスクラムを押し続ける!」

入部1年目からフォワードの最前列でスクラムを押し続ける。昨年秋のラグビーワールドカップイングランド大会では4試合すべてに出場、そしてこの春、スーパーラグビーのチーフスへ。「3試合先発出場できたら合格点」とニュージーランドへ向かう前に話していたが、開幕戦を含む公式戦8試合に出場、世界最高峰のラグビーリーグでの戦いを体感してきた。8月9日からチームに合流し、9年目のトップリーグに臨むヤンブーこと山下裕史選手に、スーパーラグビーのこと、今後の目標などを聞いた。

PROFILE
  • やました ひろし
  • 1986年1月1日、大阪府四条畷市出身。183cm・120kg。
  • 都島工業高校→京都産業大学→コベルコスティーラーズ(2008年4月入部)
  • ポジションはPR。
  • 昨シーズンまでの公式戦出場回数122、日本代表キャップ49

人生初のノンメンバーを経験我慢の時期を経て再び試合出場

開幕戦、3番を付けてプレーしました。開幕スタメンは予想していたのでしょうか?

「チーフスに合流して、3週間足らずで開幕を迎えました。準備期間が短い中で、プレシーズンマッチにも1試合出場させていただき、スクラムでアピールできたので、リザーブには入るかなと予想していましたが、まさか先発とは思ってもいなくて驚きましたね。」

開幕戦は、アンドリュー・エリス選手がプレーするクルセイダーズとの一戦でした。

「アンディー(アンドリュー・エリス)がいるのは分かっていましたが、それを気にする余裕もなくて、めちゃめちゃ緊張していました。開幕戦はクルセイダーズのホームゲームで、テントから走ってピッチに向かっている時に、「これ、テレビで見ている雰囲気やん!」と思ってしまって(笑)。すごく変な感じでした。」

スクラムはどうでしたか?

「クルセーダーズのフォワードは、オールブラックスの選手がたくさんいますし、あの試合に関しては、やられてしまいましたね。」

続く第2節 vs ライオンズ戦、第4節 vs ジャガーズ戦と先発出場しましたが、その後、第9節 vs シャークス戦まで出番がありませんでした

「とんとん拍子で、すべてがうまくいき、3番で出場させてもらっていたのですが、試合に出て自分の課題が分かってきました。フィジカル、スピード、そこがまったく違うので、狙われてしまって...。ディフェンス面で足を引っ張る形になり、21歳の若いPR、アトゥナイサ・モリがいいパフォーマンスをしていたこともあり、メンバーから外れてしまいました。正直、悔しかった。AチームとBチームでの試合形式の練習の間、ノンメンバーはグラウンドの外で練習を見ていることになるんです。それがめちゃめちゃキツかった。家族を連れて、ニュージーランドにまで来て、いったい何しているんやろうって。それで、その時、試合に出ていないPRがいたので、その選手に、どうやってモチベーションを保っているのかを聞いたんです。そうしたら、ファミリータイムを楽しめばいいんじゃないかと言われて。あとスクラムコーチにも、焦って、どうしたらいいんやと聞きに行きましたね。コーチからはシーズンは長いので、いつかチャンスが来る、その時にそのチャンスを手放さなければいいと言われました。」

我慢の時期だったんですね。

「コベルコスティーラーズでもそうですが、高校でも、大学でも怪我以外で、ノンメンバーという経験したことがなかったので、精神的にキツいものがありました。ノンメンバーだったPRの選手のアドバイスに従って、一度ロトルアへ家族旅行に行ったりしましたが、基本的には毎日、クラブハウスで練習に明け暮れていて、ディフェンスの個人練習をしたり、いつ呼ばれてもいいように良い準備をしていたら、焦りが徐々になくなってきました。あとデベロップメントで1試合、クラブチームでも数試合プレーできたのも良かった。そうしたら、第8節vsハリケーンズ戦でアトゥナイサ・モリが怪我をし、チャンスが回ってきた。」

サム・ケイン、アーロン・クルーデンの努力する姿に、刺激を受けた。

再び試合に出るようになって、山下選手自身のプレーは変わりましたか?

「どうですかね、開幕戦や2試合目と比べると、少しはスーパーラグビーぽいプレーができるようになったんですかね(笑)。フィールドプレーは合格ではないけれど、落第点をつけられるようなことはなくなったように思います。それとスクラムは、ケイン・ヘイムズというハイランダーズから今年加入したPRの選手が試合に出るようになったことが大きかったです。ハイランダーズは、日本代表のスクラムコーチだった(マルク・)ダルマゾが指導をしていたので、ヘイムズと僕は、スクラムに対して同じ考えを持っている。もともとチーフスは、それほどスクラムを重視していなかったんですが、ヘイムズが僕の言いたいことを代弁してくれるような感じで、同じ考えの選手がいることが有り難かったですね。」

スクラムを指導していた前アシスタントコーチのマシュー・プラウンドフット氏から、木津選手はスーパーラグビーでいろいろな組み方を体感してくるようにと言われたそうですが、山下選手は、日本と比べて違いを感じましたか?またどのチームのスクラムが一番強かったのでしょうか?

「ニュージーランドのチームは比較的オーソドックスな組み方でしたね。組んでからドンという感じで、トップリーグの方が、組む前の立ち位置や角度など考えて組んでいます。一番強いと思ったのは、クルセイダーズですね。でも開幕戦ではやられましたが、フィジーで行われた第13節では、スクラムで後手を踏むことはなかった。スーパーラグビーではないですが、今回僕が経験した中で一番スクラムが強いと感じたのは、ウィンドウマンス中にチーフスと対戦したウェールズ代表です。スクラムを組んで、フッカーがボールをかいた後の、セカンドプッシュが、フォワードの8人がまとまって押してくる。それはニュージーランドのチームとはまったく違いましたし、強かった。」

チーフス vs ウェールズ代表戦というと、山下選手もチームメイトと共に見事なハカを披露していましたね。

「あれはいい経験になりました。チーフスに入ってから定期的にハカの練習があったんですが、5月下旬にウェールズ代表戦が決まってからは、2日に1度、全員でハカの練習をしていたんです。その後、HOのヒカ・エリオットが100試合出場を達成した時にも、ロッカールームでヒカに対してハカを踊りました。優勝していたら、スタジアムでハカが舞えたんですけど、それは実現できずに終わりました。」

スーパーラグビーに挑戦して、いろいろな経験をされましたが、一番の収穫は何だったのでしょうか?

「サム・ケイン、アーロン・クルーデンといったオールブラックスでも活躍している選手が、チーム練習以外にも、自主トレーニングに精を出し、常に努力している姿を間近で見てきました。チーフスで求められているプレーができないとメンバーから外れますし、ひいては、オールブラックスにも選ばれなくなる。だから、必死なんですよね。そういう懸命な姿に刺激を受けましたし、僕もまた日本代表に選んでもらえるように頑張らないといけないと気持ちを新たにしました。チーフスのコーチからも、チームを離れる時に、代表を目指して頑張るようにハッパをかけられました。」

コベルコスティーラーズでの優勝、そして前人未到の公式戦200試合を目指す!

またスーパーラグビーに挑戦したいですか?

「チーフスは、怪我をしていた3番が戻ってくるので、オファーはないと思います。来年は、サンウルブズでプレーしたいですね。サンウルブズと日本代表は直結していますから。ラグビーをやるからには、日本代表に選ばれたいという思いがありますので、コベルコスティーラーズで頑張ります!」

山下選手は昔から日本代表を目指していたのでしょうか?

「コベルコスティーラーズに入って頑張れば、日本代表が近くなるのかなとは思っていました。だけど、めちゃめちゃ代表を意識していた訳ではありません。2012年にエディーさん(エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ)に呼んでいただいて、しごかれて、昨年、ワールドカップイングランド大会に出場させていただきましたが、ワールドカップも目標だったという訳ではないんです。ただ2011年のニュージーランド大会の前に、メンバーから外れたことがとても悔しくて。その悔しさが、2015年につながったというのはあります。きつい練習にも耐えることができましたし、結果として、南アフリカにも勝つことができ、しんどい4年間が報われた。そしてワールドカップで日本代表のスクラムがどの国にも負けなかったことが、チーフスでプレーすることにつながった。すべてがいいタイミングだったように思いますね。」

ワールドカップに出場し、スーパーラグビーを経験、山下選手の次の目標というのは。

「2019年を狙ってはいますが、やっぱりチームで優勝したいという思いが強いです。僕自身、これまで一度も日本一を経験したことがないので、早く達成したいですね。」

トップリーグ100試合出場も目の前に迫っていますね(現在97試合)。

「トップリーグ100試合は、あまり思い入れがなくって(笑)。ただコベルコスティーラーズでの公式戦200試合は誰も成し遂げた人がいないので、達成したい。そのためには、年々、PRも求められるものが多くなっているので、それに応えることができるようにしつつ、レギュラーを守り続ける。若手に負けないように、これからもスクラムを押し続けます!」

山下選手にとってコベルコスティーラーズとはどういうチームなのでしょうか。

「家のように心地がいいですし、帰ってくる場所ですかね。代表にいっても、チーフスにいっても、帰ってくるところはコベルコスティーラーズ。コベルコスティーラーズに入って代表に選んでもらって、チーフスでプレーできるチャンスが回ってきて、コベルコスティーラーズに入部して良かったです。」

同期入部は、谷口到選手、OBの菊池和気さん、アンダーソン ネーサン。ただ3人とも1学年上なんですよね。

「そうなんです。同い年の選手はチームには一人もいなくって。それもあって先輩と一緒に過ごすことが多かったですね。特にOBの(林)慶鎬さんや松原(裕司)さん(釜石シーウェイブスRFC)には、可愛がっていただいて。今でもよく連絡を取っていますし、松原さんは、ニュージーランドにいる時にも電話がありました。両先輩からはグラウンドだけでなく、ラグビーに取り組む姿勢などを教えてもらって、そういう先輩に出会えたことも良かったです。今シーズンこそ、お二人に優勝の報告がしたいです。」

松原さんや林さんによい報告ができるように、今シーズンも活躍を期待しています。では最後に、いよいよ幕を開けるトップリーグに対して意気込みをお願いします!

「ラグビースタイルは、ここ2シーズンから大きく変わりましたが、強いセットプレーが武器であることは変わりません。日本一のスクラムで、トップリーグ初年度以来の優勝に貢献できるように頑張ります。今シーズンもファンの皆様の熱い応援よろしくお願いします!!」

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