取材日:2016年6月29日
ジム・マッケイ 新ヘッドコーチ インタビュー
アリスター・クッツェー前ヘッドコーチの退任に伴い、オーストラリア出身のジム・マッケイ氏がヘッドコーチに就任しました。卓越したアタッキング マインドを持ち、2011年にはクイーンズランドレッズのスーパーラグビー初優勝に貢献するなど数々の功績を残すジム・マッケイ新ヘッドコーチが目指すラグビースタイルやチーム像とは?
ジム・マッケイ
ヘッドコーチ
PROFILE
- Jim McKay
- 生年月日:1966年10月25日(49歳)
- 国籍:オーストラリア
- 現役時代のポジション:SO、WTB
- 経歴
- 2004-08年/ナショナルディビジョン1(イングランド)コーニッシュ・パイレーツ ヘッドコーチ
- 2008-09年/プレミアシップ(イングランド)レスタータイガース アカデミーコーチ
- 2009-13年/スーパーラグビークイーンズランドレッズ アシスタントコーチ(アタック・バックス)
- 2013-14年/オーストラリア代表 アシスタントコーチ(アタック・バックス)
- 2014-15年/プレミアシップ(イングランド)ウスター・ウォーリアーズ ストラテジー&コーチングコンサルタント、トンガ代表 テクニカルアドバイザー
- 主な戦績
- 2011年/スーパーラグビー優勝
- 2012年、2013年/スーパーラグビープレーオフ進出
- 2013年/オーストラリア代表のイギリス・ヨーロッパ遠征で17トライを記録
クリエイティブでポジティブなラグビーをご覧いただきたい
マッケイヘッドコーチが最初に取り組んだこととは何だったのでしょうか?
「チームビジョンを明確にし、方向性を明示しました。また、はじめの1ヶ月間は私自身が、チーム状態を把握するための時間でもありました。スタッフ、選手とミーティングをし、お互いを知ることを心がけてきました」
チームビジョンについて具体的に教えてください。
「我々は日本のラグビー界において頂点に立つことを目指しています。ではどうやってそこに到達するのか。そのためには、選手ひとりひとりがハードワークし、可能な限り成長しなくてはいけません。そういう思いを込めて、チームスローガンに『Working towards excellence』を掲げました。これは匠の域を目指して、ハードワークをしていくという意味です。これまでと同じことをしていたら、同じ結末にしかたどり着くことができません。卓越した存在になるまでハードワークし続けていくよう話しました」
目指すラグビースタイルとは?
「ファンの方が見ていてワクワクするようなクリエイティブでポジティブなラグビーです。アタックでもディフェンスでも、選手がチームのために80分間絶え間なく身体を張り続ける。よりスピーディで、よりタフなラグビーをしていきたい。特にアタックでは、ほかのチームに圧倒的な差をつけたいですね。クリエイティブなアタッキングラグビーを構築していきます」
初練習の後に行われた記者会見で、相手より多くトライを獲りにいくと言われていました。
「ミスがあっても、ポジティブな姿勢でアタックし続け、最終的に相手より多くトライを獲る。コベルコスティーラーズの歴史を考えた時、クリエイティブなアタックがDNAとしてあります。そういうラグビーは観る者をワクワクさせる。ラグビーはある意味で、"アート„です。各選手がクリエイティブでなくてはいけません。それぞれの役割の中で、クリエイティブな動きをして、トライまでつなげる。そういうアタックを数多く見せたいですね」
これまでのラグビーから大きくスタイルが変化しそうですね。
「確実に変わります。まずスピードが速くなる。横にだけでなく、前にも素早く仕掛けてアタックしていきます。ディフェンスも、相手よりも先にセットする。そういうラグビーをするためには、選手は、スピードとタフさを兼ね備えないといけない。またアタック、ディフェンスのシステムも変わり、選手に求めるものもこれまでとは違ってきますので、時間が必要となります」
ラグビースタイルを変えている中で、春は3試合の練習試合が行われ、1勝2敗という結果に終わりました。
「どのようなプレーをするのか分からない選手が多かったので、この3試合はそれを見る良い機会になりました。黒星が先行したことは残念ですし、やるべきことは多いと感じました。ただ春は、バズ(バジル・カージスヘッドS&Cコーチ)の指導のもと、ストレングス&コンディショニングを中心にトレーニングを行い、チームビルディングに時間を割いていました。まさに土台づくりの段階でしたので、開幕までにラグビーの部分をどんどん積み上げていきます」
2時間を超えるチーム練習が行われることも。これまでにないハードワークで頂点まで上り詰める!
現時点での手応えは?
「選手はハードワークしてくれています。と同時に、目指すラグビーをするにはハードワークが必要だという意識も浸透してきています。それに春の3試合でも、良いパフォーマンスができている時間帯はありました。ただそれがコンスタントにできていたかと言われれば、そうではありません。選手は何を期待されているのか、何をしないといけないのかを理解してきていますので、彼らが信念を持って戦えるようにコーチ陣がバックアップしていきます」
春の練習試合ではセットプレーの安定という課題が出ました。
「やるべきことの中には、もちろんセットプレーも含まれています。7月からマルコ(カプートアシスタントコーチ)が合流しますので、彼の指導のもと強化していきます」
キャプテンに求めるものを教えてください。
「キャプテンは良い見本にならないといけません。そういう意味では橋本キャプテンは、グラウンドでのプレーだけでなく、ラグビーに取り組む姿勢も素晴らしく、チームメイトから尊敬を得ています。彼は優れたリーダーですし、選手とコーチ陣をつなぐパイプ役としても、いい働きをしてくれていますね」
また目指すべきチーム像とは?
「コベルコスティーラーズが日本のラグビー界の中で重要なチームであり続けるようにしていきたい。しかしながら現時点でサンウルブズや日本代表でプレーしているのは、木津(武士)と山中(亮平)だけです。より多くの選手を代表に輩出できるようなチームにしていきたいですね」
初めて日本で指揮を執ることに対し、プレッシャーは感じますか?
「イギリス、オーストラリアのあらゆるレベルでコーチとしてキャリアを積んできましたが、通訳を介して指導することも初めてですし、50人近い選手がいるにもかかわらず、スコッドが2つに分かれておらず、Bチームのリーグ戦がないことも初めての経験です。新しいことばかりですが、自分にとって大きなチャレンジですので、楽しんで仕事をしています。開幕が近づくにつれ、プレッシャーは大きくなると思いますが、プレッシャーも楽しみのひとつ。それにプレッシャーがあるから強い気持ちが生まれてくる。目指すべきラグビースタイル、チームを作るためにベストを尽くします」
トップリーグへ向けて意気込みをお聞かせください。
「今シーズンはプレーオフがなく、リーグ戦の結果で優勝が決まります。全15試合、すべてが重要ですので、どの試合でも、コンスタントなパフォーマンスを発揮し、相手によって戦術を変えて、弱みをついていくような戦いをしていきたいですね」
ファンの皆様方へメッセージをお願いします。
「ファンの皆様方はチームの一員です。皆様と心をひとつにして全力で戦っていきますので、スタジアムにご来場いただき、我々をサポートしていただけますよう、よろしくお願いします」