チーム

5月1日(日)第15節ホストゲームにて、スティーブ・カンバーランドコーチへの献花台を設置します。

2022年4月17日、長年チームを支えたスティーブ・カンバーランドヘッドフォワードコーチが逝去しました。2008年シーズンからチームを支え、2016年シーズンから2シーズン、近鉄ライナーズ(当時)でコーチを務めた後、2018年シーズンより再び神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)でフォワードコーチに就任。 2018年シーズンの15年ぶり2度目のトップリーグ優勝に大きく貢献しました。 多くのスティーラーズファンからも親しまれたカンバーランドコーチへ、 皆様とのお別れの場として、5月1日のホストゲーム最終戦、試合会場にて献花台を設置することとしましたので、お立ち寄りいただけると幸いです。また、キックオフ前に黙祷を捧げたいと思いますので、ご賛同いただける方は、ご協力をお願いします。※献花用のお花についてはご持参いただきますよう、ご協力をお願いいたします。

なお、こちらからは、2008年シーズン、ファンクラブ会報誌に掲載したカンバーランドコーチのインタビュー記事がご覧いただけます(取材日は2008年7月22日)。ぜひご一読ください。

スティーブ・カンバーランドコーチ
「ファンの方々にトップリーグNo.1のセットプレーを
見ていただけるようべストを尽くします」
来日したのはいつですか。
(2008年)6月4日です。ニュージーランドとまったく環境も違いますが快適に生活していますね。
環境や文化も違う日本でコーチをしようと決意された理由をぜひお聞かせください。
ハイランダーズで5年コーチを務めてきましたが、自分自身、まったく新しい環境で選手を大きく成長させたいと思っていたんです。そんな時に今年の1月頃、コベルコスティーラーズからオファーをいただきました。正直なところ、ヨーロッバのクラブチームからもいくつかお話をいただいていましたが、ハイランダーズでプレーをしていたジョシュ(ブラッキー選手)から、チームのラグビー環境の良さや選手のレベルの高さなどを聞いていましたし、サポートしてくれる回りの人間もとても能力が高いということを彼は話していました。とても良い機会だと思い、迷うことなく日本に来ることに決めました。
来日されてから3試合練習試合がありましたが、全試合観戦されたのでしょうか。
もちろん。サニックス、トヨタ、ワールド戦と観戦しましたよ。トヨタ戦は非常に良い試合でした。実はチームから日本に来る前に昨シーズンの試合のDVDをもらっていたんです。ビデオで見るのと、実際にプレーを見るのとではまったく違いますから、コーチングする前によい機会になりました。
昨シーズンのビデオや実際に試合を見てどういうことを感じられましたか。
FWプレーのスキルの部分でいくつか気になるところはありました。
具体的にどういう点なのかを教えてください。
まずスクラムです。神戸のスクラムは、一人一人が単体で組んでいて、8人のユニットとして組めていないなと感じました。ラインアウトに関しては、安全な前だけで、後ろにボールを投げることができない。6番に投げることができないというのは、致命的ですからね。その他にも、ブレイクダウンのスキルや状況判断等、修正するポイントはいくつかあると感じました。
実際に指導をされたのはいつからでしょうか。また強化はどのように進められているのでしょうか。
ワールド戦の翌日から指導を始めました。私がこのチームに招聘されたのは、コベルコスティーラーズをトップリークでどこよりも強いセットプレーを持ったチームにするためです。そのためにはスクラムでもラインアウトでも、まずは1人1人の選手が自分の役割を理解し、技術を上げていかなくてはいけません。ジャンパーもリフターがしっかりしていなければ、最高のジャンプはできないですし、スクラムに関しても、フロントローの選手は後ろにいる5人がしっかり組んでくれないと最高のプッシュができません。スクラムでもラインアウトでもそれぞれ8人の役割があります。その部分を選手たちにしっかり理解させることが私の仕事のひとつだと思っています。そして全員が、しっかりとした技術を持ち、役割を理解した上で、その後、ユニットとして機能するようにしていく。そのような段階を踏んでいっています。
スクラム練習の際、一人一人に組み方を指樽されていたのが印象的なのですが…。
どの選手でも自分の持って生まれたフィジカルの能力があります。例えば、北川有広選手は、身体は小さいですが、体幹が強いですし、力もあります。彼の身体に合った適切な組み方をすれば、スクラムを組む相手が大きくても、勝つことができます。身体が大きい小さい、体幹が強い弱いなど、選手のフィジカルの能力に合った組み方というのがありますし、それを指導していくことが私の役目です。
今は(取材日は7月22日)個々の技術を上げる段階という訳ですね。ところで8人でスクラムを組む練習をほとんどされていないようなのですが…。
根本的なところで、日本人のスクラムに対する考え方と私の考え方が違うからなんでしょうか。日本人は、個人の技術などに関わらず、とりあえず8人対8人のスクラムを100本組むことが強くなる近道であると考えているように思います。ですが、私はスクラムを組む8人がしっかりとした技術を持ち、それぞれが自分たちの役割を理解し共有した上で組むことに意味があると考えているんです。まず選手たちに正しい技術と考え方を身に付けてほしいんです。今の時点では、その部分に重点を置きトレーニングをしていますし、それから人数を増やして(スクラムを)組んで行こうと思っています。ただ合宿期間中か遅くとも合宿明けには、8人対8人で組む練習を始める予定です。
ラインアウトも基本的にまずは個人の技術が根底にあると言う感じでしょうか。
そうですね。それぞれの役割ごとに、一人一人が高い技術を身に付け、責任を理解し、それぞれの役割を果たしたら、8人のユニットとして機能します。ジャンパーもリフターも完璧な仕事をして、スローワーも最高のスローイングをする。今、松原や村上らは、一生懸命スローイングの練習に取り組んでいますよ。あと、ラインアウトに関して言うと、「自信」を付けることも大きいと思いますね。6月に行われたトヨタとの練習試合では、6本投げて6本とも取った、それが毎日続けば、必然的に自信になります。その積み重ねも大きいです。
指導されてから約1ヵ月が経ちましたが、選手の反応は?
学ぼうとする熱意はとても感じられます。向上心がありますし、私が想像していた以上に高い能力を持った選手がそろっています。これからまだまだ教えていくことはありますし、選手たちの成長が楽しみではありますね。
ところで8月から新ルール(※1)が施行されますが、どのような影響があると考えられていますか?
ゲームの展開がこれまでに比べ、格段に速くなると思いますので、FW、BKともプレーとプレーの間の状況判断がとても重要になってきます。それとスクラムのオフサイドラインが5m下がりますので、スクラムが強ければ、そこからアタックのオプションが持てます。ラインアウトに関する新ルールについては、どういう人数でいけばいいのか等、トップリーグが始まってから試行錯誤しながらになってくるでしょうね。スーパー14でも、シーズン前半は新しいルールをどうやって最大限に生かすのか試しながらの戦いになっていましたし、トップリーグでもそうなってくると思います。
ファンの方々も、オタゴ・ハイランダーズで強いスクラムを作りあげたカンバーランドコーチの手腕に期待をしていると思います。最後にファンの方々にメッセージをお願いします。
今すぐに「日本一」のスクラムを作りあげるというわけはいきませんので、そこはぜひ理解してほしいですね(笑)。ただナンバー1の強さを持つセットプレーをご覧いただけるよう、私もベストを尽くしますし、選手もベストを尽くしますので、ぜひ楽しみにしていてください。

(※1)2008年8月1日から「ELV」と呼ばれる試験的ルールが世界的に実施されました。主な変更点には、(1)スクラムからの防御のオフサイドラインが5m下がる(2)モールは崩してもよい(3)ボールがタッチラインの外へ出た直後のクイックスローインは後方へ投げてよい、など。

インタビューでは「今すぐに『日本一』のスクラムを作りあげるというわけはいきませんので…」と、話していましたが、カンバーランドコーチの指導で、スクラムが強化され、ベテランPRの平島久照選手は、「カンビー(カンバーランドコーチ)が来てから、スクラムを起点にトライが生まれるようになりました。僕だけでなく、チームのスクラム自体が大きく変わりました」と言います。

今シーズンはスクラムでプレッシャーを受ける場面もありましたが、第14節クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では、スクラムに安定感が戻ってきました。カンバーランドコーチと同じ2008年シーズンに入団した山下裕史選手は「僕がチームにいる限りは、良いスクラムを組み続けたいですし、カンビーの残してくれたレガシーを後輩に引き継いでいかないといけない」と誓います。

チームに多大な功績を残し、日本のラグビー界の発展に貢献されたカンバーランドコーチに敬意と感謝を表すともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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