取材日:2025年5月31日
【試合レポート】5月31日(土) NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25 プレーオフトーナメント3位決定戦VS埼玉パナソニックワイルドナイツ
トップリーグ時代から20連敗中の超難敵を相手に勝利を収め、3位でフィニッシュ!
準決勝で東芝ブレイブルーパス東京に敗れて3位決定戦に回ったコベルコ神戸スティーラーズはトップリーグ時代から引き分けを挟んで20連敗中の超難敵、埼玉パナソニックワイルドナイツと対戦。「トップ3の相手に対してもしっかり戦えることや自分たちの強さを証明する試合にしたい」と臨んだ一戦は、アクシデントが重なった。当日急遽CTBリトルがメンバーから外れて、FB松永がスタメンに繰り上がり、リザーブにはUTB辻野が入った。加えて、落雷による50分の試合中断。さらに、後半から出場したHO北出が脳震盪を起こし、再びターナーがグラウンドへ。しかし、そんなアクシデントをものともせずに、チーム一丸となって戦い、22-17で勝利。神戸Sはリーグワン発足後最高順位となる3位でシーズンを終えた。
激しい雨が降る中ではじまった試合は開始から風上に立つ神戸Sがキックを使いながら、敵陣でプレー。NO8サウマキがボールに絡んで反則を得るとショットを選択し、9分、PGで先制する。キックの応酬を経て、神戸Sが敵陣へ入ると、22mライン付近のラインアウトから展開しFLララトゥブアがラインブレイク、そこからパスを繋いで最後はNO8サウマキが左端にグラウンディング。ゴールキックは外れるも、8-0とリードを広げた。序盤から主導権を握る神戸Sだが、ここで落雷の可能性があるために試合が中断されることになった。ロッカールームでは選手たちは各々にリラックスしながら時間を過ごしたという。その後、コーチやリーダー陣からキックを使って相手にプレッシャーをかけていくことなど、明確な指示が送られ、グラウンドへ。再開後、SOガットランドが深く蹴り込んだボールをFB山沢(拓)が落球、そこから神戸Sが敵陣でアタックを展開する。しかし、相手は守備力に定評がある埼玉WK。なかなか簡単に前進を許してくれない。逆に神戸Sはキックがダイレクトタッチになると、そこから自陣でのプレーに。SO山沢(京)にラインブレイクを許すと、ゴール前まで迫られる。必死のディフェンスを見せるも、32分、ゴール前でのスクラムから連続攻撃を仕掛けられ、PRヴァルにトライを献上。ゴールキックも決まり、8-7と1点差に迫られた。だが、ここから神戸Sが高い集中力を発揮する。キックオフ直後、相手に激しくプレッシャーをかけてボールを奪うと連続攻撃。埼玉WKに反則があり、ゴール前へ。前半終了間際、スクラムからFW、BKが連動しながらパスを繋いで、最後はFLララトゥブアがトライ。ゴールキックも決まり、15-7で折り返した。
埼玉WKには何度も後半に逆転を許している。前回の対戦となった第10節でも最大12点差をひっくり返された。今度こそ絶対に勝つ。そう思いを1つにしてグラウンドへ。風下の後半、LOレタリックのタックルからボールを奪うと連続攻撃を仕掛ける。そこで相手に反則があり、埼玉WK陣22mライン付近でのラインアウトからフェイズを重ねる。ハンドリングエラーが出て仕留め切ることができずに終わると、後半先にスコアしたのは、埼玉WK。13分、神戸陣10mライン付近でのスクラムから展開されて、WTBコロインベテがトライ。ゴールキックも決まり、15-14と再び1点差に迫られた。さらに、20分にはPGで加点を許して、15-17。選手からは「1つ1つのプレーを丁寧にやろう」と声が上がった。すると、ラインアウトからモールを押し込み前進しゴール前まで迫ると、日和佐から代わったSH上村がインゴールへ。ここはTMOの判定により、ノートライになるも、相手に反則があり、神戸Sは速攻を仕掛ける。25分、FWがプレッシャーをかけ、最後はNO8ポトヒエッターがトライゾーンへ。ゴールキックも決まり、22-17と再びひっくり返した。残り時間は神戸Sが相手のアタックに対し、粘り強くディフェンスする。「サイクロン」の異名を持つ元オーストラリア代表のコロインベテの突破から攻撃を仕掛けられ、ゴール前まで迫られるも、途中出場のUTB辻野が相手の転がしたボールをトライゾーンでセービング。ピンチは続くも、北出の脳震盪により再びグラウンドに戻ったHOターナーが相手ボールを奪い取る好プレーを見せる。74分にはラインアウトから連続攻撃を受け、最後は外に展開されてCTBライリーがトライを奪ったかに思えたが、TMOにより、その前のラックでノックフォワードがあり、ノートライに。神戸Sは執念のディフェンスでトライゾーンを割らせない。最後は自陣ゴール前でのマイボールスクラム。一度はスクラムが崩れるも、SH上村からCTB李へパスが渡ると、蹴り出してノーサイド。神戸Sが埼玉WKに2003-2004シーズン以来となる勝利をあげた。
レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(HC)は「長い間勝てていなかった埼玉WKに勝利でき、良いシーズンの締めくくりになった」とストロング・フィニッシュに頬を緩めた。
攻守で奮闘しプレーヤーオブザマッチに選ばれた共同キャプテンのレタリックは
「トップ3のチームに対して今シーズン一度も勝つことができていないので、それが3位決定戦に向かう上で一番のモチベーションになっていました。埼玉WKに勝利できて嬉しいですし、ディフェンスがよく機能し、来シーズンにつながる内容になりました」とディフェンス面を勝利のポイントに上げる。
阪神・淡路大震災から30年という節目で優勝という目標は達成できず、望んでいた結果ではなかったが、埼玉WKを倒しての3位はチームにとって大きい。
その試合に、第15節より試合に出続ける植田をはじめ、フナキ、上村、辻野、そして初出場の本橋という5名の2025年度新加入選手がメンバー入りし、大舞台を経験した。
レニーHCは「神戸Sの将来に活きてくる」と明言する。若手の奮闘に加え、レタリック、日和佐といったベテランのプレーがこの試合でも光った。若手、中堅、ベテランがうまく融合した神戸Sの未来は明るい。来シーズン、チームのさらなる成長を大いに期待していてほしい。
PR前田 翔
「チームは埼玉WKにずっと勝てていなかったので、神戸Sに入団以来勝利に貢献したいという思いがありました。それが叶って嬉しいです!試合は、左プロップでの出場となりました。シーズン途中にレンズ(レニーHC)と平島コーチから1番をやってみないかと打診を受けて練習をはじめていて。ただ、1番は大学時代に一度挑戦し試合に出たのですが、15分ほどで交代させられたことがあって。今回、神戸Sで初めて公式戦で左プロップとしてリザーブに入り、もともと緊張しないタイプなのですが、最後のスクラムではめちゃくちゃ緊張しました。いかにスクラムを安定させてボールを出すかに集中し、良い仕事ができたかなと。ただ、スクラムについては1本反則を取れましたし良かったのですが、第14節以来の試合ということで試合勘が落ちていたことが反省点です。今シーズン、リーグ戦後半では3番としてなかなか出場機会がなかったのですが、1番に取り組んで、実際に3位決定戦でプレーし左プロップでもやれるところをスティールメイツにも見せられたと思います。これからも試合出場を目指して、1番と3番、両方に取り組んでいきます」
LO本橋 拓馬
「前日から緊張していましたが、やるべきことは明確だったので、思い切りプレーしました。後半20分から出場し、埼玉WKの選手に疲れが多少見えていましたが、ボールキャリーもできて強みであるフィジカルで勝負できたことは嬉しいです。この経験を来シーズンに活かしたい。今シーズンは1試合の出場に終わりましたが、オフシーズンから良い準備をして、来シーズンは開幕戦からメンバーに絡めるように頑張ります!」
SH日和佐 篤
「試合に向けて、全員がベストなパフォーマンスを発揮しようと準備してきて、それを出せた一戦になりました。特に最後のゴールラインを背負ってのディフェンスは埼玉WKのアタックも良かった中で集中力高く守り切り、ベンチから見ていて誇らしかったですし、震災から30年という節目を迎えて目標とする優勝はできなかったですが、3位決定戦での僕らのパフォーマンスから見ている方々に何かを感じてもらえたんじゃないかなと。個人的にはサントリー時代に何度も埼玉WKに勝っているんですけど(笑)、チームはなかなか勝つことができていなかったので、この勝利は自信になりますし、苦手意識も払拭できると思います。今日は若い選手を含めて一丸となって戦い、勝利を掴むことができました。チームは若手、中堅、ベテランがうまく融合し、良い文化ができています。それにシーズン終盤には良いアタックができるようになりましたし、厳しい試合を勝ち抜くこともできるようになってきました。特にプレーオフの3週間はチームとして良い時間を過ごせたので、それを来シーズンに活かしたいと思います」
CTB李 承信
「阪神・淡路大震災から30年という節目のシーズンということでチャンピオンを目指してきましたが、3位という結果で最後チームメイトやスティールメイツと笑って終わることができて嬉しい気持ちでいっぱいです。試合は、風が強いことや雨というコンディションもあり、ブリン(・ガットランド)を中心にキックでプレッシャーをかけていき、アタック、ディフェンスでそれぞれが1つ1つやるべきことを遂行しようと話していました。みんなで同じページ見ることができ、手応えを感じられた試合になりました。最後のディフェンスのところは、フォワードのハードワークに尽きます。絶対にトライラインを割らせないという気持ちが伝わったと思いますし、神戸Sのジャージを着てプレーする上でのプライドを見せられたのかなと。今日は20年以上勝利できていなかった埼玉WKに勝つことができて、本当に嬉しいですし、トップ3のチームに勝ったことは間違いなく来シーズンにつながります。しかも、メンバーには2025年度の新加入選手をはじめ若いメンバーが多く入っていました。彼らが大舞台を経験できたことも良かったです。来シーズンこそ優勝できるよう、自分たちを見つめ直し取り組んでいきます」