取材日:2026年6月15日
2025-26シーズン 退団選手インタビュー Part.10 FL前田 剛選手
兵庫県宝塚市出身。2018年度、子どもの頃から憧れていたという神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)に入団。ブレイクダウンでの激しいプレーとタックルを武器に、同じフランカーのポジションを争う仲間たちと切磋琢磨しながら成長してきました。デビュー戦となったのは、地元・神戸で開催のNTTリーグワン2022第4節埼玉パナソニックワイルドナイツ戦。第8節東京サントリーサンゴリアス戦では初の先発出場を果たし、試合は17-56で大敗しましたが、相手のキーマンの1人、オーストラリア代表のショーン・マクマーン選手に対してゲインラインを越えさせず、個人的には手応えを感じたといいます。このシーズンは6試合に出場し、タックル成功率95パーセントという数字を残しました。しかし、ここ3シーズンは出場機会に恵まれず、今シーズンをもってジャージーを脱ぐことを決意。「これからは僕もスティールメイツとしてチームを応援します!」と話す前田 剛選手の8シーズンとは。
「子どもの頃から憧れだったチームで
8シーズンプレーできたことは誇りになります!」

前田 剛
GO MAEDA
PROFILE
- 生年月日/1996年1月19日生まれ(30歳)
- 出身地/兵庫県宝塚市
- 経歴/いずみ幼稚園→伊丹ラグビースクール→報徳学園高校→明治大学
- ポジション/FL
- 2025-26シーズンまでの神戸Sでの公式戦出場回数/8
優勝ではじまり、優勝で終わった神戸Sでの8シーズン
8シーズン、お疲れ様でした。今シーズンはどうでしたか。
「今シーズンは脳震盪の影響があり、グラウンドで練習することすらままならなくて。それでヤンブーさん(山下 裕史)から『何かできることを見つけてチームに貢献したらいいんじゃないか』とアドバイスをいただき、分析のサポートをすることになりました。自分の得意とするブレイクダウンについてダン(・マクファーランドFWコーチ)さんとデータ等を共有し、チームでもミーティングで相手の特徴について話をする時間をもらいました。グラウンド内でチームの力にはなれなかったですが、分析という面で少しは優勝に貢献できたのかなと思います」
入団1年目の2018-2019シーズンにも優勝を経験しました。優勝からはじまり、優勝で終わった神戸Sでのラグビー人生になりましたね。
「そうなんです。すべてチームメイトのお陰です!」
今後はどうされるのでしょうか。
「4歳からはじめたラグビーですが、引退して社業に専念します。8シーズン、会社のサポートを受けながらラグビーに専念させていただいたので、恩返ししたいと思います。選手として後悔なくやり切ることができたのも会社のお陰です」
入団当時を振り返っていただきたいのですが、大学からチームに入り、どういうことを感じましたか。
「学生時代はブレイクダウンでの激しいプレーとタックルをフランカーとしての自分のアイデンティティにしてきました。でも神戸製鋼(当時)に入ってコンタクトだけでは試合出場を勝ち取ることはできないんだと痛感しました」
そこでお手本にしたり、参考にしたりした選手はいるのでしょうか。
「橋本(大輝)さんと前川(鐘平)さんです。お二人は外国人選手との競争に勝ってポジションを獲得していました。お二人ともワークレートが高いですし、スキルもあります。それに相手をドミネートするようなタックルができる。自分との差を感じて、そこを埋めていけるように取り組んできました」
もっとも印象に残っていることはデビュー戦でのメンバー発表
前川選手に憧れていたそうですね。
「東海大学で活躍されていた前川選手に憧れていました。前川さんもですが、橋本さんもトップクラスのフランカーで、そういう目標とする先輩が身近にいたことは幸せなことでした。お二人ともキャプテンとしてチームを牽引された経験があり、プレーだけでなく、チームへの向き合い方、人間性も素晴らしくて、お二人のようなフランカーになりたいと思いました」
両選手からプレーについてアドバイスをもらうことはあったのでしょうか。
「いろいろとアドバイスをいただきました。お二人に追いついて、追い越すことができれば良かったのですが、なかなか難しかったですね」
前田選手はチーム最年長の山下選手と一緒に早朝トレーニングをしたり、プライベートでは一緒にサイクリングに行ったりする仲ですよね。山下選手から影響を受けたことも多いのではないでしょうか。
「ヤンブーさんは気持ちが強い方なのでメンタル面でアドバイスをもらうことが多かったです。また、チームファーストで動くことなどを教わりました。ヤンブーさんとはプロップとフランカーですし、年齢も10歳離れていて、しかも代表でも活躍されていたので、入団当初は近寄りがたくて、それほど話す機会がなかったのですが、入団3年目にナベ(渡邉 隆之)と僕が朝練をしていたことをきっかけに声をかけていただき、一緒に早朝トレーニングをすることになりました。ラグビー界のレジェンドともいうべき存在と一緒にトレーニングしたことも良い思い出になります」
リーグ戦のデビューは、入団4年目のNTTリーグワン2022第4節埼玉WK戦でしたね。
「当時ヘッドコーチだったデーブ(・ディロン)からハンドリングスキルについてよく指摘されていたんです。それでアシスタントコーチだった(森田)恭平(現・BKコーチ/アカデミーコーチ)さんにずっとパスを指導してもらっていたんですが、2年目のトップリーグ2020はシーズン序盤にチーフス派遣を打診されました。チーム内で自分の立ち位置を考えた時に戦力として評価されていないと感じ、悔しい思いがありました。結局、コロナ禍で大会が中止となり、ニュージーランド留学も途中で打ち切りとなって、翌シーズンのトップリーグ2021も出場機会がありませんでした。そうしてNTTリーグワン2022第4節埼玉WK戦で初めてリザーブに入ったのですが、チーム内でのメンバー発表の時に、デーブから『あなたのことを誇りに思う』と言ってもらえたんです。戦力として認められたことがめちゃくちゃ嬉しくて!8シーズンの中でもっとも印象に残っている出来事です」
1年目のトップリーグカップ2018-2019に出場していましたが、リーグ戦の喜びはまた別物だったと。
「カップ戦とはまったく違いました。これまでラグビーをやってきて、一番嬉しい瞬間でしたね。今までやってきたことが報われたと感じましたし認めてもらえたことは、自分にとって大きな自信になりました」
NTTリーグワン2022は最終的に6試合に出場しました。
「試合二日前のフルコンタクトの練習は、自分にとって“本番”だと思ってやってきました。シーズン中は練習試合も限られるので、その時間こそが自分をアピールできる場所だと考えて、どれだけファイトできるかを常に意識してきました。その姿勢を認めてもらえて、6試合に出られたことは嬉しかったです」
レガシー活動をこれからも続けてほしい
レニー体制になってから出場機会を得ることができませんでしたが、デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(以下HC)のもとでプレーしてどうでしたか。
「レンズ(デイブ・レニーHC)が求める、アタックもディフェンスもできて、ラインアウトも飛べて、といったオールラウンダーなフランカーを目指して頑張ってきましたが、なかなか難しかったです。レンズは厳しいコーチではありますが、人と人との繋がりを大事にしています。グラウンド外でチームをひとつにするような働きかけをしてくれました。社会人として仕事をする上でも、人と人との繋がりは大事だと思うので、レンズの考えに触れることができたことも良かったです」
バックローにはアーディ・サベア選手がいました。
「当然なのですが、すべてにおいてレベルが高くて、さすがオールブラックスだなと思いました。あと、見た目は少し怖い感じですが、中身は紳士的で、優しくて。そのギャップに驚きました。チーム内のイベントでハカを披露してくれたこともありました。アーディだけでなく、ガズラ(ブロディ・レタリック)といったワールドクラスの選手と一緒にプレーできたことも、素晴らしい経験になりました」
この8シーズンは前田選手にとってどのような時間になりますか。
「宝塚市出身で、神戸Sは憧れのチームでした。実際、神戸の街の方々をはじめ、多くの人から応援されていて、素晴らしい歴史と伝統があります。そういうチームで8シーズンプレーし続けられたことは、自分の中で誇りになります。本当に良い時間を過ごすことができました」
引退にあたり、同期の井関 信介選手からは何か言葉をかけられましたか。
「『お疲れさん』とシンプルに声をかけられました。同期入団はいなくなりましたが、同い年の(中嶋)大希がいます。これからも2人には頑張ってもらいたいです!」
チームは新しい体制で連覇を目指します。前田選手が期待することは。
「2018-2019シーズン、総監督だったウェイン(・スミス)のもとでレガシー活動を行い、阪神・淡路大震災において復興のシンボルと言われた第3高炉を見学するなどしました。また、レンズのもとではチーム全員で追悼行事『阪神淡路大震災1.17のつどい』に参加しました。チームにとってこのような活動はとても大きな意味を持つことです。これからも続けてほしいという思いがあります。あとは、神戸SのDNAであるボールを動かす、見ていて楽しいラグビーで、これからも強いチームであり続けてほしいと思います」
では最後にスティールメイツにメッセージをお願いします。
「公式戦で活躍する姿をなかなか見せることができなかったのですが、プレシーズンマッチやサラマンダーズマッチ(トレーニングマッチ)であたたかい声をかけていただきました。中にはネーミングタオルを振って応援してくださる方もいて、嬉しかったです。8シーズン、本当にありがとうございました。今後は僕もスティールメイツとしてチームを応援します!」

