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KOBELCO

close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.10 林 真太郎

 取材日:2025年6月6日

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.10 林 真太郎

同期入団は、橋本 皓選手と徳田 健太選手。3選手ともに関西出身で、もともとお互いのことを知っていたこともあり、すぐに意気投合。入団当初、日本人選手も外国人選手も錚々たる顔ぶればかりで「3年で退団することになるかも…」と話していたそうですが、3倍にあたる9シーズン在籍し28試合に出場しました。先発は28試合のうち13とリザーブが多かったですが、抜群のアタックセンスを持ち、試合に出たら必ずといっていいほどラインブレイクしたり、トライを決めたりと活躍。中でも語り草になっているのが、「トップリーグ2020」第5節リコーブラックラムズ(当時)戦でのトライ。前半22分グラウンドに入ると、前半終了間際にヘイデン・パーカー選手からのキックパスを逆サイドでキャッチし、そのままトライゾーンへ。さらに、後半にもトライをマークし、強烈なインパクトを残しました。中学からスタートしたラグビー人生は、今シーズンをもって幕を下ろすという林選手。クールで飄々とした雰囲気で、チームメイトから慕われていた彼に、神戸Sでの9シーズンを振り返ってもらいました。

林 真太郎

SHINTARO HAYASHI

PROFILE
  • 生年月日/1993年9月13日
  • 出身/大阪府交野市
  • 経歴/同志社香里中学→同志社香里高校→同志社大学→コベルコ神戸スティーラーズ(2016-2017シーズン入団)
  • ポジション/センター
  • 2024−25シーズンまでの公式戦出場回数/28

「神戸Sでの9シーズンは青春でした。
みんなのお陰で幸せな時間を過ごすことができました」

入団2年目のウィングでの起用が転機に

今後もラグビーを続けるのでしょうか。

「現役は引退します」

ラグビーはやり切ったと。

「うーん、どうなんですかね。入団当時、バックスにはジャック・フーリーやアンダーソン フレイザー、トニシオ・バイフ、日本人にも正面(健司)さん、(今村)雄太さん、濱島(悠輔)さん、大橋(由和)さん、山中(亮平)さん、南橋(直哉)さん、(山下)楽平さん…と能力の高い選手がずらりといて、同期のジュニア(橋本 皓)やトク(徳田 健太)にしても強力なライバルばかりだったので、『3年で退団することになるんじゃないか』と話をしていました。そう考えると、その3倍の9シーズンも所属できて、在籍期間だけを考えると後悔はないです。ただ、ここ数シーズンは出場機会が少なかったので、もっと出たかったという思いはありますね」

とはいえ、能力の高い選手が多い中で入団1年目から試合出場を勝ち取りました。

「僕自身、大学時代、チームに外国人選手がいなかったこともあり、(ジャック・)フーリーやフレイ(アンダーソン フレイザー)、トニー(トニシオ・バイフ)といった選手とチームメイトになって、彼らに勝つにはどうすればいいのか模索しました。最終的に持ち味であるアタックでアピールし、シーズン終盤にチャンスを掴むことができたのですが、ただただ運が良かったと思っています。入団2年目は、楽平さんの怪我もあり、ウィングで出場機会を得ることができて。大学時代、センターでしかプレーしたことがなかったのですが、ウィングをさせていただいたお陰で、リザーブに入りやすくなったと思います。プレーのクオリティはさておき(笑)、“ユーティリティ”みたいな顔ができるようになりましたから」

確かにウィングで出場することの方が多かったですよね。

「センターで出場したのは入団1年目だけなんですけど、9シーズンを通してセンターで選手登録されていました (笑)。けど、良いウィングがいる中で2年目という若い時に10試合に出場させてもらったことは、その後のキャリアにおいて大きな影響がありました。試合には練習では得られない経験があります。それを若い時に感じられたことは今に活きていると思います」

短い時間でインパクトを残す!

林選手というと試合途中でグラウンドに入って、必ず活躍するイメージがあります。

「出場した28試合の中で、一番多く付けたのが『23番』です。自分のアピールポイントはアタックなので、試合に出たら何かしらインパクトを残すことにフォーカスしていました。反対に言うと、先発で出場すると、アタック、ディフェンス、それぞれでやるべきことを考えてプレーしないといけません。リザーブとしてアタックで少ないチャンスをモノにすることを第一に考えてプレーし、自分で言うのもなんですが、結構頑張ったと思います。見ている方からも『試合に出たらいい仕事をするよね』と言っていただくことが多くて嬉しかったですね」

「トップリーグ2020」神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われた第5節リコーブラックラムズ(当時)との一戦は途中から出場し、2トライをマークしました。特に1本目のヘイデン・パーカー選手のキックパスからのトライはインパクト抜群でした

「あの試合は一番パフォーマンスが良かったかもしれません。トライについては、コージー(ヘイデン・パーカー)があのプレーを得意としているので、ハンドシグナルを出してキックパスを要求しました。彼も自信満々で蹴ってきて、ドンピシャのところにボールが飛んできた。コージーのキックスキルは抜群に高かったですし、そのお陰で生まれたトライですね」

大学までずっとセンターでプレーしてきてウィングは難しくなかったのでしょうか。また、ウィングでプレーするようになり、成長できた点というのは。

「センターをしていた時はウィングやフルバックの動きをあまり考えずにプレーしてきましたけど、自分がウィングをすることになって、こんなに大変なことをしていたんだとまず思いました。左右の連携、前後の連携など、同じバックスでもこんなにも違うのかと衝撃を受けて。キックの処理はほかのバックスの選手に任せて、アタックでもディフェンスでも前を見るだけで精一杯でした。そういう中で徐々にウィングに慣れてきて、前と後のスペースを見てプレーしたり、オフロードパスをできるようになったりして、やれることが増えました。ただ、今でもキックは苦手で…。日和佐(篤)さんからはキックするよりも覚悟を決めてカウンターアタックをした方がテリトリーを取れると言われています(苦笑)」

山中さん、楽平さんの背中を追い続けた9シーズン

目指そうと思った選手はいるのでしょうか。

「そういう選手はいないんですけど、凄いなと思って見ていた選手はたくさんいますね。例えば、DC(ダン・カーター)もそうですし、ガズラ(ブロディ・レタリック)もとんでもない選手だなと思いましたね。DCに関しては視野の広さ、プレーの巧みさ。ガズラはブレイクダウンの強さが尋常じゃない。一度、試合形式の練習でブレイクダウンに入ったら、ガズラがドーンと来て、一瞬、記憶が飛んで。“容赦なく”というのは、こういうことなのかと驚きました」

日本人でとんでもないと思った選手というのは。

「山中(亮平)さんと(山下)楽平さんですね。お2人は僕が神戸Sに入ってから、ずっと試合に出続けていましたし、実際にプレーヤーとしても凄い。山中さんは、サイズもあってフィジカルも強いのに、スキルフル。大型プレーヤーというのはフィジカル一辺倒になる傾向があるのですが、山中さんはパスの精度が高いですし、キックも抜群に上手い。しかも左足でキックを蹴れる。パスに関しては、僕が見てきた中で一番上手いんじゃないですかね。それでもって、手詰まりになった時にはフィジカルで前に出ることができますし、山中さんは僕の中で理想とする選手で、かっこいいなと思います。楽平さんはスピード、スキルの高さだけでなく、とっさに出るプレーがラグビーIQの高さを物語っています。特に1対1になった時の駆け引きが抜群で、ジャンケンに例えると、楽平さんがグーを出してくるかなと思って、僕がパーの準備をしていると、ギリギリのところでチョキを出してくる。また、パーを出させる誘導もうまいんです。僕は入団してから数え切れないくらい楽平さんとマッチアップしてきているので、その駆け引きに慣れましたが、初めて楽平さんと1対1になる選手は嫌だと思いますね。山中さん、楽平さん。今、考えると、入団してからずっと二人の背中を追いかけてきたように思います」

同期入団は橋本 皓選手と徳田 健太選手です。橋本選手はキャプテン、バイスキャプテンを務めましたし、両選手ともにリーダーグループの一員として一翼を担っています。林選手はどうだったのでしょうか。

「二人ともストラテジーなどのリーダーグループに入り、チームのために頑張っているのですが、僕はリーダーグループに縁がなくて(苦笑)。入団2年目の時に一度だけブレイクダウンのリーダーグループに入りましたが、その一度きり。僕がリーダーをするタイプでないことを歴代のヘッドコーチが理解してくれていたのだと思いますね。自由にさせてもらっていましたが、2018-2019シーズンにウェイン(・スミスラグビーコーチメンター/チームアンバサダー)が就任してからは、役職がなくても、チームのこと、ラグビーのことを考えるようになりました」

2018-2019シーズンをきっかけに考えるようになったというのは。

「後輩が増えてきたこともありますが、ラグビー自体が自分たちの判断で考えながらやるラグビーに変わりましたし、チームの雰囲気もガラリと変わって、会社や街を代表して戦おうとなりました。そういうウェインのラグビーやチーム作りに触れたことで、チームに対して何ができるのかなど考えるようになりました」

優勝を達成した2018-2019シーズンは林選手にとってどういうシーズンになりましたか。

「みんながウェインのラグビーを信じて、ひとつになって、僕自身は脳震盪を起こして5ヶ月ほどラグビーができない時期があり、試合には出ることができなかったですが、考えてやるラグビーは楽しいと思えましたし、優勝もできて満足度の高いシーズンになりました」

同期の存在が支えになった

試合に出たシーズン、出られなかったシーズン、いろいろあった神戸Sでの9シーズンだったと思います。頑張る原動力になったものとは。

「同期の存在ですね。ジュニアが試合に出ているから、トクが頑張っているからという感じで、お互いに支え合ってきました」

林選手の人生において、この9シーズンというのはどういう期間になりますか。

「青春というのは大学までだと思うのですが、僕の中では、神戸Sで過ごした9シーズンも青春でしたね。中学からラグビーをはじめて20年になるのですが、ずっと変わらず高い熱量で取り組んで、長い青春だったなと。引退したら、絶対にブロンコ(フィットネステスト)を走ることもないですし、ウエイトトレーニングをすることもないと思います。チームメイトと『嫌やなあ』と言いながら走ったり、『もう無理!』とか言いながらトレーニングしたり、それを含めて青春でしたし、楽しかったです。本当にいろいろな経験ができましたし、凄い選手と一緒にプレーできて、幸せな時間を過ごすことができました」

井関 信介選手を筆頭に後輩とも仲良かったですよね。

「後輩たちには仲良くしてもらって感謝していますね。特に井関(信介)くんはロッカールームでふざけあったりして、いつも僕を楽しませてくれました。神戸Sで楽しい日々を送れたのは井関くんのお陰でもありますね」

チームメイトにメッセージをお願いします。

「たくさんの選手と関わり合いながらラグビーができて楽しかったですし、チームメイトには感謝しかないですね。優勝したり、みんなと楽しい空間を作れたりしたことは、僕の中で大事な青春の1ページになっています。後輩、同期、先輩と、みなさんにはお世話になりました。怪我をせずに頑張ってほしいですし、これからも応援しています」

では最後にスティールメイツにメッセージをお願いします。

「公式戦でも、練習試合でも、多くの方々が応援に来てくださり、嬉しかったです。メンバーに入っていなくても声をかけていただいて、感謝しかありません。これから神戸Sがより強くなるにはスティールメイツの存在が不可欠ですし、チーム自体もさらに皆様から応援されるのに相応しいチームになっていくと思います。これからも変わらず熱い応援をよろしくお願いします」

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