取材日:2025年6月3日
2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.8 小畑 健太郎
強豪・帝京大学で1年からポジションを獲得。大学時代に3度日本一を経験し、2019-2020シーズンに神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)に入団しました。幼馴染で大学時代も一緒にプレーした今村 陽良選手の同期の一人です。同期と仲が良く、先輩たちにも可愛がられた小畑選手、実は誰よりもチーム愛が強い熱血漢なんです。試合の際はスタンドから誰よりも大きな声で仲間を鼓舞。プレーオフトーナメント3位決定戦埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ではバックアップメンバーとしてグラウンドに立ち、試合メンバー一人ひとりに声をかけてエナジーを注入しました。ラグビーが何よりも好きで、チームが大好きという小畑選手に在籍した6シーズンを振り返ってもらいました。
小畑 健太郎
KENTARO OBATA
PROFILE
- 生年月日/1996年12月3日
- 出身/京都府京都市
- 経歴/アウル洛南ジュニア→京都市立伏見中学→伏見工業高校→帝京大学→コベルコ神戸スティーラーズ(2019-2020シーズン入団)
- ポジション/スクラムハーフ
- 2024−25シーズンまでの公式戦出場回数/12
「チームが大好きですし、神戸の街も大好きです。人があたたかくて、みんなに可愛がっていただきました」
入団1年目のチーフス派遣が転機に
帝京大学から2019-2020シーズンに神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)へ。1年目はどうでしたか。
「大学時代はずっと試合に出ていたので、コベルコスティーラーズ(当時)に入ったら同じポジションの選手が僕を含めて5人もいて、試合形式の練習でも交代が多く、なかなか入ることができなくて。ずっとラグビーが好きで、どんな時でも楽しかったのですが、人生初めて楽しくないと思いました。そんな時にチーフスへの派遣が決まりました。シーズン中に言われたので、トップリーグ(当時)では『出番がない』ということなんだと解釈し、正直悔しさを感じて…」
実際にニュージーランドに行ってみて、どうでしたか。
「最初はイヤイヤだったのですが、ニュージーランドに行ったら、ラグビー漬けの毎日でした。まさに朝から晩まで練習してボールにもたくさん触ることができて、すごく楽しかったです。もともとコベルコスティーラーズには社員選手として入ったのですが、ニュージーランドでそういう生活を送っているうちに、ラグビーにもっと集中したいと考えるようになり、プロ転向を決めました。ただ、コロナの影響を受けて留学途中で日本に帰らないといけなくなってしまって。不完全燃焼のままニュージーランドでの生活が終わってしまったのが残念で。短い時間でしたが、チーフス派遣は社員からプロ選手へと考え方を変えるきっかけになりました」
『ザ・負けず嫌い』を貫いた
チームの同じポジションには日和佐 篤選手というラグビーワールドカップに2度出場した経験豊富なベテラン選手がいます。小畑選手にとって日和佐選手の存在とは。
「基本的に同じポジションの選手はライバルですし、喋りたくないと思っていて。けど、わっさん(日和佐 篤)は、そんなことをまったく気にすることなく『こうしたらいいんじゃない』とかいろいろとアドバイスをくれて。わっさんには敵わないと思いましたし、わっさんだけでなく、トクさん(徳田 健太)もよくアドバイスしてくれました。プレーに関して、負けたとは思わないですが、ラグビー選手として、人として、太刀打ちできないなと感じました」
『同じポジションの選手はライバルだし、喋りたくない』。それは小畑選手のプレーヤーとしての美学のようなものなんでしょうか。
「ただただ、とんがっているだけです(苦笑)。客観的に自分を見た時に、めちゃくちゃイキっているなあと思って…。けど、その考えは変えたくないと思っています」
負けん気が強くて、スクラムハーフらしい性格だなと思います。
「めちゃくちゃ負けず嫌いですね」
とはいえ、ライバルである日和佐選手から学んだことも多いのではないでしょうか。
「それはもう、めちゃくちゃ勉強になりました。わっさんのラグビーに対する姿勢、チームに対する思い、そしてプレーももちろんそうですが、すべてが魅力的で、学んだことはたくさんありますし、トクさん、(中嶋)大希さんといった他のスクラムハーフからも多くのことを得ることができました。性格も違えば、プレースタイルも違う中で、1人1人が魅力を持っていて、勉強になりましたね」
ラグビーに関するすべてが好きです
そんな中で昨シーズンはご自身にとって最多となる7試合に出場しました。
「昨シーズンは調子が良かったこともありますし、レンズ(デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ)にも評価していただけたという自負はあります。昨シーズンのままいけたら良かったのですが…。オフシーズンは課題であるパスのスキルに集中して取り組んでシーズンに入ったのですが、今シーズンはパフォーマンスに波があって、自分でもわかるくらい良くありませんでした。特にダメな時は大きなミスをしてしまう。安定感を身につけないといけないと痛感しました」
レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチのもとでラグビーができたことはどうでしたか。
「レンズは『あかんことはあかん』とはっきり言ってくれますし、良かったら褒めてくれます。指導者としてリスペクトしていましたし、オーストラリア代表のヘッドコーチを務めた経験のある指揮官のもとで2シーズン、プレーでき、良い経験になりました。しかも、1年目のシーズンには試合に出ることができて認めてもらえたので、それは自信につながります」
印象に残っている試合や出来事があれば教えてください。
「すべてですね。ラグビーが好きなので練習も、試合も、すべてが楽しくて。唯一入団1年目が楽しくなかったくらいで、それ以外はラグビーに没頭することができました。そうやって没頭できたことが印象に残っていますね」
3位決定戦埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ではバックアップメンバーとしてウォーミングアップ中に試合メンバーに気合を注入していたと聞きました。
「シーズン終盤、トクさんと(上村)樹輝が怪我をして数試合続けてバックアップメンバーに入ったことがあったんです。レンズに『バックアップメンバーがやるべきことは何ですか』と聞いたら、『エナジーを出してくれ』と言われて。それで、とにかく声で盛り上げようと思って、一人ひとりに声をかけて。そうしたら、レンズはもちろん、エパ(ジェラード・カウリートゥイオティ)やブリン(・ガットランド)、ヤンブーさん(山下 裕史)といった選手から『ナイスエナジー!』と言われて、試合後にも『テンションが上がったし、ありがとう』と感謝されました。そうしたら、3位決定戦前にレンズから『試合メンバーに入らなかったことは残念だけれど、バックアップメンバーとしてエナジーを出してほしい。最後にいい仕事をしてほしい』と言われて。退団が決まっていましたし、試合に出られないことはやっぱり悔しかったですが、エナジー要因でも僕は嬉しかったですね。それで、ウォーミングアップ中、これまで以上に声を出しました」
試合前から良い空気を作り出して、2004-2005シーズン以来の埼玉WK戦での勝利をもたらした。小畑選手は実は熱いハートの持ち主なんですよね。
「そういう風に見せたくないんですけどね。練習もしんどい、きついとか思ったことがないですし、チームも好きだし、勝ってほしい。ラグビーに関わることはすべて好きですね」
大好きな陽良、そしてお兄ちゃんたちに感謝!
小畑選手というと今村 陽良選手と常に一緒にいたイメージがあります。
「高校の3年間以外はずっと同じチームでプレーしていて、プライベートでも仲が良かったので、陽良は本当に体の一部のような存在です。寂しいですし、本人にもそれは伝えていて、陽良も寂しがってくれていますね」
今シーズンを持って退団する山中 亮平選手、山下 楽平選手とも仲が良かったですよね。
お二人はオシャレだし、かっこいいですし、カリスマのような存在で。『今日もかっこいいですね』と僕からどんどん声をかけて、仲良くしていただくようになりました。お二人に加えて、(山本)幸輝さんや北出(卓也)さん。お兄ちゃんたちと遊んでもらって、ラグビーに関してもバックアップしてもらって感謝しています」
公私で良い6シーズンを過ごせたと。
「楽しかったですね。チームが大好きですし、神戸の街も大好きです。人があたたかくて、みんなに可愛がっていただきました」
チームメイトにメッセージを。
「陽良と離れるのは寂しいですし、同期の時流(髙尾)も大好きです。チームメイト全員を愛しています!」
では最後にスティールメイツにメッセージをお願いします。
「6シーズン、応援ありがとうございました。いい声も悪い声もすべて僕のエネルギーになっていました。これからもラグビー続ける予定ですので、今後ともよろしくお願いします!」