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KOBELCO

close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.7 高橋 陽大

 取材日:2025年6月3日

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.7 高橋 陽大

中学3年から単身でニュージーランドへ渡り、4年間、ラグビーの本場で研鑽を積み、現地の高校卒業後の2020年12月、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)へ。まだあどけなさが残る18歳は5シーズンでスクラムのスキル、フィジカル、フィットネスとあらゆる面でレベルアップ。公式戦デビューは果たせなかったですが、レベルの高い選手と切磋琢磨し、「ラグビー選手として貴重な経験を積むことができました」と頷きます。まだまだ23歳。ラグビーは続けるという高橋選手は、神戸Sでの経験を活かして飛躍を誓います。

高橋 陽大

HARUTO TAKAHASHI

PROFILE
  • 生年月日/2002年6月29日
  • 出身/大阪府東大阪市
  • 経歴/東大阪KINDAIクラブ ラグビースクール→ロトルアボーイズ高校→コベルコ神戸スティーラーズ(2020-2021シーズン入団)
  • ポジション/プロップ
  • 2024−25シーズンまでの公式戦出場回数/0

「神戸Sでの5シーズンがあったから、
今の自分があると言えるようになりたい!」

ウェインの存在に惹かれて入団

高校卒業後、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)へ入団しました。5シーズンはどうでしたか。

「悔いがないと言えば嘘になりますが、18歳から日本のトップチームに入り、代表経験のある先輩たちと切磋琢磨してきました。それにこの2シーズンは、オーストラリア代表の指揮官を務めたヘッドコーチから指導を受けることができて。他では味わえない充実した5シーズンを過ごすことができました」

改めてコベルコスティーラーズに入団しようと思ったきっかけを教えてください。

「高校2年の時、1学年先輩の(濱野)隼大と一緒に練習生としてコベルコスティーラーズの練習に参加する機会をいただけました。コロナの影響でリーグ戦が中止になった『トップリーグ2020』が開幕する直前までの約1ヶ月、チームに帯同させていただいたのですが、DC(ダン・カーター)、ガズラ(ブロディ・レタリック)、トム・フランクリンをはじめとする錚々たるメンバーがいて、ラグビーの完成度が高くて、練習も良い緊張感があって、これが日本のトップチームかと思いました。あと、驚いたのが、チームの母体である神戸製鋼所や神戸の街をすごく大事にしていることでした。会社、街を背負って戦っていることが伝わり、そういうカルチャーもいいなと思いました。それと、ウェイン・スミスの存在はすごく大きかったです。実は高校3年の時にウェインが試合を見に来てくれて、僕のことを気にかけてくれていることも嬉しかったです。高校を卒業し、ニュージーランドの大学で学びながら向こうのクラブチームでプレーするのか悩んでいたのですが、その後オファーをいただいたこともあり、コベルコスティーラーズに入団することに決めました」

当時、総監督を務めていたウェイン・スミスラグビーコーチメンター/チームアンバサダーから言われたことで印象に残っていることはあるのでしょうか。

「初めて出場した練習試合が、2021-22シーズン、大分合宿で行われた宗像サニックスブルース(当時)とのプレシーズンマッチなのですが、スタートで出場し、スクラムも悪くありませんでした。試合後、ウェイン(・スミス)から『このまましっかりスクラムを磨けば、日本代表に入れる』と言ってもらって、すごく嬉しかったことを覚えています」

そんな言葉をかけてもらったんですね。スクラムを習得するのは大変でしたか。

「もともとNO8でプレーしていたのですが、高校1年の時にプロップにコンバートしました。ニュージーランドではスクラムはボールが出ればいいという考え方だったので、入団してからめちゃくちゃ苦労しましたね。ほかのプロップの先輩がスクラムを組む際に『肩を入れる』『足を半歩下げる』など言っていたのですが、その感覚がまったくわからなくて。スクラムは腕のちょっとした角度、足の位置で変わる世界です。そういう感覚を理解するまでかなり時間がかかりました」

少しずつスクラムの基礎を身に付けていったという感じでしょうか。

「そうですね。2022-23シーズン、ラッシーさん(平島 久照)がスクラムコーチに就任してから1つ1つ細かいことを教えていただきながら、実際にスクラムを組んで習得していくことができました」

スクラムを1から学ぶことができました

先ほども言われていたようにプロップには、1番にも、高橋選手と同じ3番にも、日本代表経験者がいます。そういう先輩たちから教えてもらうことも良かったのではないでしょうか。

「ヤンブーさん(山下 裕史)はもちろん、具(智元)くんからもいろいろと教えてもらいました。スクラム練習は火曜と木曜にあるので、その後レビューをもらっていたのですが、具くんはスクラムの知識が豊富なので、すごく助けてもらいましたね。あと、同年代のプロップが入団してきたことも力になりました。3歳上の(前田)翔くん、1歳上のワッキー(森脇 光)。同世代のプロップと、スクラムのことを話せたことが良かったです。スクラムは考え過ぎると行き詰まってしまうことが多々あるんです。それを喋って解決することができました。あと、今シーズンはワッキーと一緒にラッシーさんに指導を仰ぎにいって、そういうのもあって入団5年目にしてスクラムはベースが固まってきたように感じました」

5シーズンでスクラムは随分と成長できたんですね。

「成長したかどうかは周りの判断することなので。ただ、誰がトイ面になっても、渡り合えている感覚はありました。それに、入団した当初はどこが悪いのか、それさえわからなかったのですが、今ではしっかり理解できるようになって、スクラムの知識が格段と増えました。今シーズンはチーム自体のスクラムのレベルが上がり、スタッツにもそれが現れています。そういう中で自分もしっかり組むことができて良かったです」

先輩たちに可愛がってもらった5シーズン

スクラム以外の面ではどうでしょうか。

「高校生の時は好きなものを食べていたので、スキンホールド(皮下脂肪)を気にしたことがありませんでした。入団以来筋肉を増やして、肉体改造に着手しましたし、ブロンコ(フィットネステスト)も頑張りました。それもあって、今シーズンはスキンホールドの数値も良かったですし、ブロンコも自己ベストを更新しました」

ただ、なかなか出場機会を得ることができなかったです。

「入団3年目くらいには試合に出られるかなと思っていたのですが、そんなに甘い世界ではなかったですね。幼稚園からラグビーをはじめて、ニュージーランドでも試合に出ることができました。ずっと順風満帆だったので、こんなに試合に出られないのは初めてのことで。腐りそうになったこともありますが、やるべきことをやろうと自分自身にフォーカスして練習に取り組んできました。2022年に急逝したカンビー(スティーブ・カンバーランドヘッドフォワードコーチ)からは『チームに入団したことで、すでに満足している』と言われたこともあり、今、振り返ると、1年目からもっとハングリーさを出して、どんどん先輩にも聞いたりして取り組めば良かったのかなと思うこともありますが、このチームに入って、良い経験をさせていただきました」

プライベートではどうでしたか。

「ほんとに先輩たちにはよくしていただいて。寮生活をしていたので、しぐ兄(髙尾 時流)や翔くん、(松永)貫汰くん、(濱野)隼大、大ちゃん(伊藤 大祐)…寮にいるみんな、仲が良くて、よくご飯に連れていっていただいて。もちろん、寮生以外の先輩にもお世話になりました。(今村)陽良さん、(小畑)健太郎さんは、昨シーズン、トヨタヴェルブリッツとのプレシーズンマッチで、僕がアイザイア・マプスア選手に当たり負けしなかったことがあり、それ以来『陽大は強いんやから、頑張れ!』と常に励ましてもらっていました」

先輩たちに可愛がってもらった5シーズンだったんですね。

「生意気な後輩だったと思いますけど、みんなに可愛がってもらいました。 (山本)幸輝さん、(前田)剛さん、(井関)信介兄さんもよくしていただきましたし、日和佐(篤)さん、貫汰くんとはキャンプや釣りに行ったりもしました。ヤンブーさん、日和佐さんが出場したRWC2015イングランド大会をテレビで見ていましたし、貫汰くんが高校生の時の大阪府予選を花園で観戦しています。そういう人たちと一緒に練習して、仲良くしていただいて、本当にすごいことだと思います」

試合出場を目指して、これからも努力し続けます!

今後はどうされるのでしょうか。

「ラグビーを続けます。まだまだスクラムは成長させていかないといけないですが、フィールドプレーには自信がありますし、フィジカルについては入団当初から当たり負けしないと手応えを感じていました。この5シーズン、なかなかプレシーズンマッチ、トレーニングマッチにも出る機会がなかったので、ゲーム感覚を取り戻して移籍先で『3番』を背負えるように頑張ります」

今後の目標を教えてください。

「高校時代に対戦していた選手がスーパーラグビーでデビューしていて、彼らと試合をすることが大きな目標になっています。どういう形でもいいので実現できるように頑張ります!」

高橋選手のラグビーキャリアの中で、神戸Sで過ごした5シーズンとは。

「神戸Sでの5シーズンがあったから、今の自分があると言えるようになりたいです。そのためにはこれからも努力し続けて成長していかないといけません。悔しい思いをしたことも糧にして、ラグビー選手としてキャリアをしっかり重ねられるようにしていきます」

では最後にスティールメイツにメッセージをお願いします。

「入団した当時はコロナ禍だったので、スティールメイツと触れ合う機会がなかったですし、声を出しての応援も禁止されていました。数シーズン前から声出し応援が解禁され、スタジアムで熱狂的な声援を聞いて、皆様の前でプレーしたかったという気持ちになりました。特に今シーズンのプレーオフトーナメンでの応援は素晴らしくて、グラウンドに立っていたかったなって。今シーズンをもって退団しますが、これからもラグビーを続けますので、神戸Sとともに応援していただけると嬉しいです。今度こそプレーしているところをご覧いただきたいと思います」

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