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KOBELCO

close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.6 山本 幸輝

 取材日:2025年6月5日

2024-25シーズン退団選手インタビュー Part.6 山本 幸輝

圧倒的なスクラムの強さを誇り、サンウルブズや日本代表でも活躍した屈指のルースヘッドプロップは、代表復帰を目指して2021-22シーズンにヤマハ発動機ジュビロ(当時)から新天地へ。神戸Sで4シーズンプレーし、代表復帰という目標は叶えることができなかったですが、「これまで経験したことがないラグビースタイルにチャレンジし、いろいろと取り組んできて、やり切りました!」と清々しい表情を見せます。グラウンドの外ではRWC2019日本大会で日本代表のチームソング「ビクトリーロード」を考案した山本選手らしく、チームビルディングに一役を担い、チームの結束を高めました。今シーズンをもってジャージを脱ぐことを決意し、今後はスクラムコーチを目指すと言う山本選手に神戸Sでの日々を振り返ってもらいました。

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山本 幸輝

KOKI YAMAMOTO

PROFILE
  • 生年月日/1990年10月29日
  • 出身/滋賀県野洲市
  • 経歴/野洲市立野洲中学→八幡工業高校→近畿大学→ヤマハ発動機ジュビロ(当時)→コベルコ神戸スティーラーズ(2023-24シーズン入団)
  • ポジション/プロップ
  • 2024−25シーズンまでの公式戦出場回数/24
  • 代表歴/日本代表(7キャップ)

「グラウンド内外でできることはすべてやり切りました。
今後はスクラムコーチを目指して頑張ります!」

選手との距離感が近い指導者を目指す

今後について伺いたいのですが。

「いろいろ経験させていただき、『やり切った』という感覚があって、今シーズンをもって現役を引退することに決めました。これまでの経験を次のステージに活かしていきたいと思っています」

次のステージというのは。

「スクラムコーチとして大学生を指導したいという思いがあって。僕自身、体が動くうちに実際にスクラムを組んで指導していきたいと考えています」

指導者として目指すコーチ像があれば教えてください。

「古巣の話になるのですが、ヤマハ発動機ジュビロ(当時)に入団した当時、長谷川 慎さん(現在・静岡ブルーレヴズアシスタントコーチ)からスクラムを指導していただきました。慎さんは遠征先から帰った時にはフロントローを焼肉屋に連れていってくれるなど、選手と近い距離感で接してくれるコーチでした。強いスクラムを作って、試合に勝って、フロントローのみんなと笑い合う。そんな選手との距離感が近い指導者になりたいと思います」

山本選手にとってスクラムの原点はどこになるのでしょうか。

「八幡工業高校ラグビー部で日課となっていた1日100本のスクラムですね。まず3対3で10本、次に5対5で10本、そして8対8で80本という感じで、毎日泣きそうになりながらスクラムを組んでいたんですけど、先輩がめちゃくちゃ強くて、背骨が折れるじゃないかと思うくらいキツかったんです。このままやったらあかんと思い、体の使い方を覚えて、徐々にスクラムが組めるようになりました。今振り返ると、あの理不尽な(笑)スクラム練習が僕の基礎を作ってくれたなって。それに、そういう練習を積んできたからこそスクラムは絶対に負けたくないという思いがありました。その練習のお陰で大学でも1年から出場することができましたし、進んだヤマハもスクラムに力を入れていたチームということで1年目からポジションを獲得できました」

ハンドリングスキルを身に付けようと神戸Sへ

スクラムに賭けていた山本選手がリーグワン初年度の2021-22シーズン、神戸Sへ。改めて、神戸Sに移籍を決めた理由を教えていただけますか。

「RWC2019日本大会で日本代表メンバーから外れた時に、どうして選ばれなかったのか、自分に何が足りなかったのかを考えたのですが、僕には圧倒的にボールを持った時のスキルがないと思ったんです。ラグビー選手として、そこにチャレンジしないといけないと考えて神戸Sに移籍を決めました」

スペースにボールを運ぶ神戸Sのラグビーはどうでしたか。

「入団して驚いたのが全員のパススキルの高さでした。そもそも僕はパスをもらったら当たりにいくしかない。そんな感じだったので、練習の時は緊張しました。またボールを落とすと、関西のチームなので、みんなが『ノックオン(ノックフォワード)!』といじってくるんです(苦笑)。ジュニア(橋本 皓)にパスを教えてもらったり、一緒に練習に付き合ってもらったりしてハンドリングスキルの向上に取り組んで、入団当初と比べるとパスもできるようになって、当たる以外にもオプションが増えて、プレーの幅が広がりました。それにボールを動かすラグビーも楽しいなと思いましたね」

1年目は12試合に出場しました。

「ただ、そこからどんどん出場機会が減ってしまって…。自信を持って移籍してきましたが、強烈なライバルが多い中で自分のプレーが出せなかったなという思いがあります」

2年目以降出番が減る中でどういう思いで練習に励んでいたのでしょうか。

「神戸Sに入ってからスキルにばかり気を取られていたのですが、自分の強みは何なのかと振り返った時に、僕はスクラムで圧倒的な強さを見せないと試合に出ることができないと思ったんです。それを当時のアシスタントコーチだった(アンドリース・)ベッカーに話したら、彼も『それでいい』と言ってくれて。もう一度スクラムにフォーカスして取り組みました」

スクラム以外にも目を向けてチャレンジできた

昨シーズンからデイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチの体制になりました。

「一気に雰囲気が変わりましたね。スキル、フィットネス、フィジカルとすべての面で求められるレベルが上がって。そこに対して全力で取り組んだのですが、なかなか試合に出場できなくて。レンズ(デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ)から課題だと言われたところを修正し、できるようになったのが昨シーズンの終盤でした」

どこが課題だと言われたのでしょうか。

「低さを意識し過ぎて、膝をついてタックルしてしまうところがありました。タックルとしては成功なのですが、膝をつくとその後、強く押し返すことができないので、改善して欲しいと言われて。それで後輩と一緒にタックル練習を繰り返し修正できた手応えを感じて、NTTリーグワン2023-24第15節静岡ブルーレヴズ戦で7試合ぶりに出場機会を得ることができました」

NTTリーグワン2023-24第15節静岡BR戦は後半10分から出場しました。タックル練習の成果は出たのでしょうか。

「タックル成功率90%と、求められている数字を出すことができました。ウェズ(ウェスリー・クラークディフェンスコーチ)からも『よくやった』と言ってもらえて、努力が実った試合になって、自分自身も成長を感じられた一戦になりました」

3年目のシーズンは3試合にしか出場できず、今シーズンに賭ける思いは強かったと思います。ただ、なかなか出場機会に恵まれませんでした。ヤマハ時代を通じて公式戦に出場できなかったのは初めてのことだと思うのですが…。

「プレシーズン、牛原(寛章)と一緒に走り込んで、これまで以上にトレーニングに時間を費やしました。それもあって34歳にしてブロンコ(フィットネステスト)で自己ベストを更新して。自信を持って臨んだ今シーズンだったのですが、無理し過ぎたのか、怪我が続いて、練習を休むことがありました。もともと怪我をしないタイプなのですが、今シーズンは怪我にも悩まされましたね。ただ、試合に出られなかったことは悔しいというより、試合に出ているメンバーが素晴らしいからだし、自分がもっと頑張らないといけないと冷静に受け止めました」

神戸Sで過ごした4シーズンは、山本選手にとってどういう時間になりましたか。

「これまではスクラムに特化して取り組んできましたが、神戸Sに入ってからスクラム以外のことにも目を向けてチャレンジすることができました。もちろん、何度も壁にぶち当たりましたし、それは個人だけでなく、チームとしても、リーグワン1年目、2年目は結果が出なくて…。けど、選手同士で結束して踏ん張ってきました。いろいろなことに取り組めて良い時間を過ごしましたし、楽しかった。神戸Sに移籍してきて良かったと思いますね」

できることはすべてやり切りました

グラウンド外でいうと、山本選手は入団後すぐにみんなと打ち解けて、ムードメーカーとしてチームを盛り上げていた印象があります。

「せっかく一緒のチームになったんだから、自分から輪に入っていって、みんなと仲良くやっていきたいという思いがありました。古巣でも同じにようにやっていましたね。特にヤマハでは、僕しか近畿大学出身の選手がいなかったので、そこで縮こまっていてはいけないと思い、どんどん自分から話しかけていって。神戸Sの後輩にも自分からコミュニケーションを取っていくことが大事だと伝えました」

よく後輩たちを誘って、食事に連れて行ったり、プレーについてアドバイスしたりされていたそうですね。

「僕自身、大学時代から先輩によく可愛がってもらって、食事に連れていってもらったり、プレーについてアドバイスをもらったりしていたんです。大学の時に一度先輩に『どうやって恩返ししたらいいですか』と聞いたら、『後輩に同じことをしてあげることが恩返しになる』と言われて。そういう経験があったので、大学でも、古巣でも、神戸Sでも同じことをしただけですね」

アドバイスに関して言うと、同じポジションの髙尾 時流選手が山本選手にスクラムについていろいろと教えてもらったと感謝していました。

「『教えた』というとおこがましいですが、苦楽を共にした髙尾の活躍は、めちゃくちゃ嬉しかったですね。もともと神戸Sに入団した当初、同じポジションのラッシーさん(平島 久照スクラムコーチ)やイシ(中島 イシレリ)を意識していたんですが、髙尾のプレーを初めて見た時に、スクラムは強いし、ワークレートも高くて驚きました。それですぐにランチに誘ったんですけど、その時、髙尾がまったく喋らなくて (笑)。無口な子だなと思ったんですけど、その時は緊張していたみたいで。今ではすっかり打ち解けて、一緒に肩を組んで歌ったりするくらい仲が良いですね」

中島 イシレリ選手や松岡 賢太選手らと一緒に韓国へ旅行に行ったと聞きました。

「本当は(松永)貫汰も一緒に行くことになっていたんですが、ちょうど日本代表合宿が終わった後でパスポートも一緒に宅急便で送ってしまって、荷物の到着が旅行の出発日に間に合わなくて、イシ、マツケン(松岡 賢太)、酒木(凜平/東芝ブレイブルーパス)と4人で行きました。マツケンが言ってくれたのですが、『幸輝さんが入団してから、食事に行ったり、みんなと話す機会が増えたりして、チームの結束力が高まった』と言ってくれたんです。それはすごく嬉しかったですね」

グラウンド内外でいろいろな取り組みをされてきたんですね。

「みんなとコミュケーションを取ってチームがいい方向に向かうようにやってきました。僕ができることはやったので、だから後悔もないですし、すっきりしています」

チームに対して今後期待することは。

「神戸Sに入団してびっくりしたのが、スティールメイツのチーム愛の強さでした。ファンはチームが100%出し切って勝利することを期待していると思います。1試合1試合を全力で戦って勝利し、強い神戸スティーラーズを見せてほしいですし、必ず見せてくれると思っています。それに加えて、神戸Sから日本代表入りする選手がもっと増えて、日本ラグビーを盛り上げてほしいなって。日本代表入りできる選手はもっとたくさんいると思いますので、1人でも多くの選手が代表に選ばれてほしいと思います」

では最後にスティールメイツへメッセージをお願いします。

「いつも温かいご声援をお送りいただき、ありがとうございました。チームに入団して驚いたのが、応援の熱さやチーム愛の大きさでした。僕は現役を引退しますが、これからも神戸Sの応援よろしくお願いします!またどこか会った時には声をかけてもらえたら嬉しいです!」

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