取材日:2025年5月17日
【試合レポート】5月17日(土) NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25プレーオフトーナメント準々決勝VS静岡ブルーレヴズ
スクラムを修正して臨んだ今季3度目の静岡BR戦。リーグ戦の借りを返す勝利で準決勝へ
一発勝負のプレーオフの戦いがはじまった。準々決勝の相手は今シーズン2度敗れている静岡ブルーレヴズ。FW陣は最終節でスクラムを押される場面があり、入念な対策を練って試合に臨んだ。
開始前まで激しく降っていた雨が止み、風上に立つ神戸Sボールのキックオフで試合がはじまった。SOガットランドがキックを蹴り込むと、FWがプレッシャーをかける。22mライン付近でモールアンプレアブルとなり、神戸ボールのスクラムに。しっかり押し込み、展開すると、連続攻撃。そこで静岡BRに反則があり、5分、神戸Sはショットを選択し、まずは3-0とした。その直後、SH北村に鋭いタックルを繰り出されてノックフォワードとなり、相手ボールのスクラムに。組み直した後、静岡BRの1番が崩れてコラプシングの反則を得る。リーグ戦の最終節とは真逆の展開に、会場が湧き立つ。しかし、敵陣10mライン付近での神戸SボールのラインアウトでHO北出が放ったボールがノットストレートを取られると、スクラムからWTBツイタマに防御網を破られ、サポートしていたWTBテファレにトライを献上、ゴールキックも決まり3-7に。再び雨が降り出す中で、神戸Sはキックを巧みに使いながら、敵陣でプレーする。神戸Sのトライは18分。相手ボールのスクラムで2つ目のコラプシングの反則を得た後、敵陣22mライン付近でのラインアウトから展開し、WTBリトルがラインブレイクすると、SOガットランドから左端のWTB松永へとパスが渡り、トライゾーンへ。ここでWTBテファレのタックルが松永の首元に入り、TMOの判定により危険なプレーと見做されて、認定トライに。さらに、WTBテファレにイエローカードが提示された。数的優位に立つ中でスコアしたい神戸S。27分、WTB植田がラインブレイクし、濡れた芝生に足を取られ滑りながらもゴール前へと前進。最後はFLララトゥブアがボールをねじ込み中央へグラウンディング。ゴールキックも決まり、17-7とリードを広げた。終盤、反則が重なり、PGで得点を許すも、17-10で神戸Sがリードをして折り返した。
後半、相手はゲームチェンジャーとしてキャプテンのFLスミス、スクラムでの優位性を取り戻すためPR茂原を投入する。息を呑むような激しいコリジョンが連続する中で、後半も先にスコアしたのは神戸S。NO8サウマキがボールに絡んで反則を誘うと、敵陣10mライン付近から連続攻撃を仕掛けて、最後はFB李のキックをWTB松永がトライゾーンで抑える。これはTMOの判定によりノートライになるも、その直後、FLララトゥブアのラインブレイクからパスを繋いでゴール前へと迫ると、最後はSOガットランドからのパスを受けたFB李がトライゾーンへ。ゴールキックも決まり、24-10に。8分には、山下(裕)と交代したばかりの今季初出場のPR渡邉がスティールを見せ、スティールメイツから歓声が上がる。しかし、11分、10mライン付近でターンオーバーを許すと展開され、WTBツイタマ、CTBピウタウと繋がれて、最後はSH北村にトライゾーンへと走られてしまう。ゴールキックも決まり、24-17に。さらに、17分にはPGで加点され、24-20と4点差に迫られる。神戸Sはキックオフ直後、相手のスローフォワードからBR陣22mライン付近でスクラムを得ると、そこから連続攻撃を仕掛けてゴール前へと迫るも、最後はパスが乱れて、相手にボールを奪われてしまう。なかなか追加得点ができない中で、神戸Sは懸命なディフェンスを見せる。SH日和佐、PR渡邉がスティールを連発。我慢強くプレーし続け、逆に33分、静岡BR陣ゴール前での相手の反則から速攻を仕掛けて、最後はSOガットランドのキックパスを左端に立つWTBブルアがキャッチし、トライゾーンへ。36分にも、スクラムで反則を得ると、ショットを選択し、3点を加点。続けて、39分にもPGを決め、35-20でノーサイド。静岡BRと今シーズン3度目の対戦で、ようやく勝ちを掴み、神戸Sが準決勝進出を決めた。
レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(HC)は
「選手たちのマインドセットが素晴らしかったです。良い準備ができて、プレーオフ準々決勝をエキサイティングな気持ちで迎えることができました。スクラムで自分たちの流れを持っていくことができましたし、ディフェンスも大部分は良かったです。ただ、ポゼッションをスコアに変えられなかった瞬間があるなど、まだまだ成長の余地があると感じられた試合になりました」と総括。続けて勝負の分け目になったのは、24-20になった局面だとし、「流れが行ったり来たりしている時がありました。完全に相手に流れが来ている時もありましたが、そこでしっかりと流れを取り戻すことができたことが大きい」と振り返った。
共同キャプテンのレタリックは「神戸Sの方が長い時間正しいエリア、正しいプレッシャーをかけながらプレーができたと思います。後半は静岡BRに非常に強いプレッシャーをかけられましたが、そこで我慢し続けてボールを獲得し、トライにつなげることができました」と勝因を語る。
最終節で劣勢だったスクラムについてレタリックは「平島コーチをはじめ、フロントローには経験豊富な選手がたくさんいます。1週間の中で正しいプランを立てて、それを精度高く完遂することができました。フロントローが良い形で組んでくれると、バックファイブには体の大きい選手がたくさんいるので、そこに乗っかって押していくことができます。今日は8人でしっかりスクラムを組んで相手にプレッシャーかけることができました」とフロントローを讃えた。
まさにFW、BKやるべきことをやり切って掴んだ勝利となった。
準決勝の相手はリーグ戦1位通過の東芝ブレイブルーパス東京だ。静岡BRと同様に今シーズン同じカンファレンスとなり、2度対戦している。1度目の対戦は26-32、ホストゲームとして行われた第14節は28-73とチーム史上ワースト失点による大敗を喫した。
レニーHCは
「セットプレーは重要になってきます。BL東京はラインアウトを強みに持っています。モウンガ、フリゼルといったキープレーヤー以外にも、ダメージを与えられる選手が揃っています。素晴らしいアタックを持ったチームなので、そこへの対応が鍵になってきます」とディフェンス面をポイントとした。
第14節の悔しさを晴らすためということだけでなく、阪神・淡路大震災から30年という特別なシーズンに優勝を達成するためにも負けられない一戦。神戸Sはチーム一丸となって勝利を勝ち取りにいく。
PR山下 裕史
「この試合に向けて平島コーチ、メンバー、ノンメンバーのフロントローとでスクラムに向けて準備してきたことが間違っていなかったんだなと答え合わせができた一戦になりました。特に意識したのはバインドのところです。いい形でヒットに持っていけて神戸Sが仕掛けることができました。後半、足が張ってきたこともあり、元気な渡邉と交代し、1本良いスクラムを組んでいたのですが、その後、静岡BRにプレッシャーを受ける場面があって。ピッチサイドから渡邉に『前に!』と声をかけ、その一言で彼が僕の意図を理解してくれて、また良いスクラムが組めるようになりました。スクラムが強みの静岡BRとがっぷり四つに組み合って、しっかり戦えたことは自信になります。静岡BRにスクラムでも、試合でも勝って、借りを返すことができました。ヒリヒリした瞬間が楽しかったですし、若手、中堅、ベテランが融合して、そこに世界的な選手がいて神戸Sは良いチームだなと改めて感じました。準決勝はBL東京との一戦になります。引き続き良いスクラムが組めるように1週間また準備していきます。準決勝も応援よろしくお願いします」
PR渡邉 隆之
「久しぶり(NTTリーグワン2023-24第10節埼玉WK戦以来)の公式戦ということで緊張していたのですが、これまでサラマンダーズ(ノンメンバー)として取り組んできたことを試合で出せましたし、チームが勝利しホッとした気持ちでいっぱいです。最終節ではスクラムが劣勢だったので、試合に向けてディテールを突き詰めてきました。前半はヤンブーさん(山下裕史)が神戸のスクラムを体現してくれたのですが、僕が入ってからはなかなかうまくいかなくて。途中、ヤンブーさんがアドバイスを送ってくれたお陰で終盤は良くなったと思います。スティール2本については、ただただ目の前のファイトに勝とうという意識でプレーしていたら、それがスティールに繋がったという感じで。途中から出て2本のスティールを決めたのは初めてのことなので、自分でも驚いています。ただ、普段の練習からカズラ(ブロディ・レタリック)やヴィリー(ポトヒエッター)といった強いFWにプレッシャーをかけにいっているので、その成果がでたのかなと。今日は静岡BRに“3度目の正直”でやっと勝つことができました。サラマンダーズのメンバーである僕が試合に出たり、若い植田が出たりして、チーム全員で戦う姿を見せられたと思います。今シーズン残り2試合となりました。また出場機会を得られるように引き続き努力していきます」
SH日和佐 篤(プレーヤーオブザマッチ受賞)
「最終節ではスクラムでやられたので、このままだったら、しんどい試合になるなと思っていたのですが、FWが修正と静岡BR対策をしてくれて、スクラムが勝利の要因です。後半に関して言うと、スミス選手が入ってからブレイクダウンが乱されてリズムが崩れたところがあって。けど、チームとして我慢してハードワークすることができ、崩れ切る前に持ち直すことができました。チームはガズラ(レタリック)、ヤンブーさん(山下 裕史)といったベテランに、若手のエナジーが融合し、チームとして成長していると感じます。準々決勝BL東京戦は、殴り合いのような試合になると思います。まずはフィジカルで殴り負けないようにしないと。先に先制パンチを出せるようにしたいと思います」
WTB植田 和磨
「第15節浦安DR戦から試合に出させていただいていますが、これまで納得いくようなパフォーマンスを発揮することができていませんでした。今日は持ち味であるラインブレイクができて、少し成長した姿を見せられたように思います。課題に感じていたディフェンス面も、最終節ではツイタマ選手やテファレ選手にボコボコにやられたイメージがあるので、個人的に絶対に止めてやろうと意識していて、大きなラインブレイクは許さなかったところも良かったです。ただ、ディフェンスは僕がタックルを外されると後ろにフルバックしかいないので絶体絶命のピンチになります。タックル成功率100パーセントを目指して、もっと良いタックルをしないといけないと感じています。今日は、FWの皆さんがスクラムで優位に立ち、フィジカルバトルでもプレッシャーをかけてくれて、BK陣に良い影響を与えてくれました。次は準々決勝です。メンバーに選ばれたら、思い切りプレーしたい。今日はラインブレイクした後、2度滑ってトライできなかったので、次こそはウィングとしてトライをマークしたいと思います」
FB李 承信
「リーグワンがはじまってから初めてのプレーオフということで緊張感が違いましたが、キックオフから10分ほど経つと慣れてきました。プレーオフをはじめて戦うというメンバーがほとんどでしたが、試合に向けてカズラ(ブロディ・レタリック)がこれまでやることを変えずに自信を持って試合に臨もうとメッセージを送ってくれたので、チームとしてメンタルの面でも良い準備ができていました。試合については、雨が降ったり止んだりというコンディションの中でキックを使ってテリトリーを取ってチャンスをしっかりスコアに繋げることができました。特に今日はFWがセットプレーを修正しプレッシャーをかけてくれたので、BKとしてゲームコントロールしやすかったです。ディフェンス面では簡単にトライを与えるところがありましたが、それ以外の面では粘り強く守ることができたと思います。リーグ戦で2度負けた相手に勝てたことは大きいですし、良い流れが来ています。準決勝で対戦するBL東京は、第14節で自分たちのミスやディフェンス面でのコネクションが良くなく敗れました。自分たちにフォーカスしてボールを持った時の精度やフィジカルで圧倒されないようにしていきたい。シーズン終了まで残り2試合。自分たちのタンクが空になるまで出し切ります」
〜NEXT GAME〜
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25プレーオフトーナメント準決勝
5月24日(土)14:05 KICK OFF
東芝ブレイブルーパス東京VSコベルコ神戸スティーラーズ
@秩父宮ラグビー場
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