取材日:2025年3月30日
【試合レポート】 3月30日(日) NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25 第13節VSリコーブラックラムズ東京
数々のアクシデントを乗り越えて掴んだ今シーズン初の3連勝!次節のBL東京戦に向けて弾みをつける
2試合続けて秩父宮ラグビー場で開催のビジターゲームだ。前節は攻守で精度が低く、本来のパフォーマンスを発揮できなかったものの、終了間際にラインアウトスティールからトライをマークして劇的な逆転勝ちを収めた。ビジターゲームで初勝利を上げたコベルコ神戸スティーラーズが第13節で対戦したのは、第6節では6トライをマークし44-15で勝利したリコーブラックラムズ東京だ。BR東京は怪我人が多いものの、元オールブラックスのSH、TJペレナラを中心にまとまりを見せており、共同キャプテンの李は「チーム力を上げてきていて、勢いがあります」と警戒した。
神戸Sは試合前日、攻守の大黒柱であるLOレタリックがメンバーから外れるなど、6名の選手が変更するアクシデントに見舞われた。さらに、SOガットランドのキックオフではじまった試合は、開始30秒で、これまで10トライをマークしているWTBモエアキオラを脳震盪により失うことになる。相手から激しいプレッシャーを受けて、思うようなアタックが展開できない中で、スクラムも安定感を欠き、反則を奪われる。13分、自陣ゴール前で速攻を仕掛けられて、神戸SでもプレーしたNO8マクカランに先制のトライを献上。14分には、HIAによりSH日和佐を10分間欠く状況になる。神戸Sはキックを使い、敵陣へと入るも、BR東京の固い守りを前にハンドリングエラーが出て、攻撃を継続することができない。26分にはゴール前ラインアウトからモールを押し込まれて前進を許し、トライを奪われる。これはTMOの判定により、モールでオブストラクションがあり、トライキャンセルになったが、その2分後の28分、キックカウンターから連続攻撃を受けて失トライ。ゴールキックも決まり14点を追いかける展開となる中、トライまでの過程で、今季初先発のLO小瀧のタックルがTMOの判定により、危険なプレーと見做されてイエローカードが提示される。14人と数的不利な状況になるも、そこから神戸Sが素晴らしいプレーを見せる。キックを受けたSOガットランドが素早くボールを高く蹴り上げると自らキャッチし、ボールを展開。力強く突進するFLフナキへのSHペレナラのタックルが高く入り、ハイタックルの反則を得ると、東京BR陣22mライン付近でのラインアウトのチャンス。テンポよくボールを繋いで、最後はゴール前ラックからSH日和佐がパスアウトしたボールにCTB李が反応し、そのまま中央へグラウンディング。前半32分にして、待望のトライが生まれた。7-14となり反撃態勢に入ったが、キックオフ直後、自陣でのブレイクダウンで相手に絡まれ反則を犯してしまうと、ゴール前での相手ボールラインアウトのピンチに。モールを押し込まれる中で、LOカウリートゥイオティが故意の反則でイエローカードが提示されてしまう。その時の状況を、前半1分モエアキオラに代わって出場のWTB山下(楽)は「13人で2人分をカバーしハードワークすることを意識した」と振り返る。CTB李は「目の前の一瞬一瞬にフォーカスしよう」と声をかけた。2人少ない苦しい状況の中で、神戸Sの集中力がぐっと高まる。
「一人一人のスイッチが入った」(李)
自陣ゴール前でボールを奪うと、SOガットランドが深く蹴り込む。東京BRのカウンターアタックからのパスをNO8サウマキがインターセプトし、攻守が入れ替わると、神戸Sが連続攻撃を展開する。BR東京に反則が出て、22mライン付近のラインアウトになると、FW攻撃を仕掛けて、最後はHOターナーがゴール中央へトライ。ゴールキックも決まり、14-14で同点に。さらに終了間際にもPGで加点し、17-14とリードして折り返した。
後半の立ち上がり、14人で戦う神戸Sは、7分、ハーフライン付近でターンオーバーを許すと、FLストーバーグにラインブレイクを許してトライを奪われるも、これはTMOにより一連の流れでFLギルに危険なプレーがあり、イエローカードが提示される。LOカウリートゥイオティがグラウンドに戻り、逆に神戸Sが数的優位な状況になると、8分、ゴール前でのラインアウトを得て、モールを押し込み前進。そこからSH日和佐、CTB李、CTBラウマペに繋いで、最後はSOガットランドが中央へ飛び込む。13分には、これまで劣勢だったスクラムで反則を得てPGで加点し、27-14とさらにリードを広げる。その後も勢い付いた神戸Sが敵陣に入り攻め込むも、ミスが出て仕留め切ることができない。さらに、修正したかに思えたスクラムで立て続けに反則が出てしまう。24分には、FLストーバーグのビッグゲインからトライを奪われて24-19に。死闘ともいうべき激しい攻防が続く中で、35分、途中出場し好プレーを見せていたLOララトゥブアのタックルが高く入り、相手はショットを選択。35m中央でのPGは外れて失敗に終わるも、ホストゲームのファンの後押しを受けてBR東京は力強いアタックを繰り出す。ノーサイドのホーンが鳴り響く中、神戸S陣10mライン付近でのBR東京スクラムから展開され、失トライ。最後の最後でトライを許したが、27-24で神戸Sが勝利し、今シーズン初の3連勝をマークした。
LOレタリックの不在、大幅なメンバーチェンジ、加えて試合でも開始早々WTBモエアキオラが脳震盪によりピッチを後にしたり、イエローカードが2枚出たりと、アクシデントが続いた。それらを乗り越えて勝利したチームをレニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(以下、HC)は「誇りに思う」と静かに述べると、「BR東京は急速に成長しているチームです。ブレイクダウンでもプレッシャーをかけられましたし、ターンオーバーからのアタックも素晴らしいものがありました。そんな中でも、落ち着いてプレーし、2人少ない状況からトライを奪うことができ、我々のキャラクターを見せられた試合になりました」とまとめた。
共同キャプテンの李も「難しい状況でも勝ち切ることができ、チームの成長を感じています」と安堵の表情を見せた。
その上で「ただ、後半敵陣にいるにもかかわらずスコアできなかったところがありました。精度、規律は、まだまだ成長しないといけないところです。13人でスコアできる力もあるので、精度、規律が改善されれば、より一層強くなれると思います」と課題を口にした。さらに、レニーHCは前後半通して安定感に欠けていたスクラムに関しても「成長させていかなければいけない」と言葉を強めた。
前節に続いて接戦となったが、しっかり勝ち切ることができ、勝ち点4を上乗せすることができた。
「ゲームの重要な局面となるスコアしないといけない場面や守り切らないといけない場面でしっかり我慢できるようになりましたし、タフな試合を勝ち切ることで勝つマインドセットが生まれてきているように思います」(李)
苦しい試合をモノにした神戸Sは、昨シーズンのリーグワン覇者で、今シーズンも首位を走る東芝ブレイブルーパス東京を次節のホストゲームで迎え撃つ。昨シーズンの2度の対戦は、7点差での敗戦と同点、今シーズンも6点差での敗戦と、後少しのところで勝ち星を手にすることができていない。今シーズン初の3連勝を挙げた勢いを持って、次節こそ、地元・神戸のスティールメイツに対BL東京戦での勝利を届けてほしい。
FLティエナン・コストリー
「カズラ(ブロディ・レタリック)はすごい選手です。だからこそ、全員が頑張っていつもより1割増しで良いパフォーマンスを発揮すれば、カズラがいない分をカバーできる。そういう思いで試合に臨み、きつい局面もありましたが、一人一人が役割を遂行し勝ち切ることができました。それに、今日はイエローカードが2枚出て13人で戦う時間がありましたが、そこでトライを取り切り、アタック力の高さを見せることができました。ただ、今節もミスが多く出てしまったところは反省です。アタックは敵陣22m内に入ればスコアできる力があるので、キックをスマートに使って敵陣に入って、スペースにボールを運んでいく。そこで、一人一人がバラバラの画を見てアタックするとミスが起きます。チームでやろうとしているアタックを全員が同じ画を見て継続していき、最後、しっかりトライを取り切れるようにしていきたいと思います」
WTB山下 楽平(プレーヤーオブザマッチ受賞)
「勝ち切れたことがまず良かったです。終盤相手のPGが成功していたら逆転される可能性もあったので、ボーナスポイントは与えましたが、耐え切って勝ちで終えたことをまずポジティブに捉えたいと思います。その上で今日出た課題はミスや反則の多さです。要所要所で反則やミスが出て、流れに乗れない展開が続きました。13人でもチャンスを作れるなど、良い部分はありましたが、ラインブレイクが起きたところでサポートが遅れて簡単なミスが出るなど、まだまだ精度や規律の面では成長の余地があります。良かった点は、以前と比べると、一気にスコアを許すことがなくなり、チームに我慢強さが生まれているところです。ただ、優勝を目指すためにも、精度と規律はさらに高めないといけません。80分間、精度高く自分たちのラグビーをやり切ることができるよう取り組んでいきたいと思います」
〜NEXT GAME〜
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25第14節
4月6日(日)14:30 KICK OFF
コベルコ神戸スティーラーズVS東芝ブレイブルーパス東京
@神戸総合運動公園ユニバー記念競技場
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