取材日:2024年8月26日
2024-25シーズン新加入選手インタビュー ジョージ・ターナー選手
8月19日、2024-25シーズンに向けて始動したコベルコ神戸スティーラーズ。6月に加入が発表されていたスコットランド代表として2度ラグビーワールドカップに出場したHOジョージ・ターナー選手もチームに合流しました。「想像していたよりも蒸し暑くて驚きました」と日本と母国との気候の違いに驚きながら、新天地でプレーすることや生活への期待に胸を膨らませるターナー選手に、古巣のグラスゴー・ウォリアーズでも選手と指揮官という関係だったデイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(HC)のことや今シーズンの目標などを語ってもらいました。
「RWC2019以来ずっと日本でプレーしたいと思っていました。フィールド内外でチームのために全力を尽くします!」
HO
ジョージ・ターナー
GEORGE TURNER
PROFILE
- 生年月日、出身地/1992年10月8日生まれ(31歳)、スコットランド・エディンバラ出身
- 経歴/エディンバラ・ラグビークラブ(PRO12)→グラスゴー・ウォリアーズ(URC)
- ポジション/HO
- 身長・体重/181cm・109kg
- 代表歴/スコットランド代表(45キャップ)※2024年3月16日現在
チャンスを与えてくれたチームとレンズに感謝
「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の時にスコットランド代表として来日されていますね。
「そうなんです。その時の日本の印象が素晴らしすぎて!試合開催地ということで神戸にも2週間滞在しました。神戸には海と山があり、街には寛げるカフェやレストランがあります。それに神戸ビーフも美味しかった(笑)。神戸という街にすっかり魅了され、いつかここに戻ってきたいと思っていたので、それが叶って幸せに思います」
7シーズン所属し100試合以上出場しているグラスゴー・ウォリアーズから神戸スティーラーズへ。難しい決断ではなかったのでしょうか。
「選手として成長させてくれたチームですし、グラスゴーでプレーすることは大好きでした。それに、グラスゴーのユニフォームを着て出場する最後の大会となったユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ(URC)では決勝戦でブルー・ブルズを破り、初めて優勝することもできました。また、3人の子供がいますので、彼らに異文化での生活という冒険を強いることにもなります。いろいろと考えましたが、スコットランド出身のラグビープレーヤーが簡単に日本でプレーする機会を手に入れられるものではありません。これを逃すともう一生、日本でプレーできないんじゃないかと思って。もともと日本で、神戸でプレーしたいと思っていましたし、このような機会を与えてくれたコベルコ神戸スティーラーズやレンズ(デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ) には感謝の気持ちでいっぱいですね」
そのレニーHCとはグラスゴー・ウォリアーズでヘッドコーチと選手という関係でした。
「レンズは、私のキャリアにおいてターニングポイントとなるきっかけを作ってくれた人物です。グラスゴーに移籍する前に所属していたエディンバラではなかなか試合に出場する機会がなくて、苦しいシーズンが続いていました。それで2017年、私がグラスゴーに加入した同じ時期にレンズがチームの指揮を執ることになったんです。彼からスキルやフィジカルなど、さまざまな面でスタンダードを上げるように言われたことでラグビーへの取り組み方ががらりと変わりましたし、リカバリーの大切さを学び、実践するようになって。振り返るとエディンバラにいた時の私は、プロのラグビープレーヤーとして意識が欠如していたのだと思います。レンズとの出会いによって意識や姿勢が変わり成長することができ、試合にも出られるようになりました。精神面でも試合に出られるようになったことでポジティブな思考になりましたし、それに伴いプレーもどんどん良くなっていき、それがスコットランド代表入りにつながったのだと思います」
セットプレーとコンタクトプレーが持ち味
レニーHCのもとでまたプレーできることも感慨深いのでは。
「レンズは人間性も素晴らしく、選手、スタッフ全員のパートナーや子供の名前も覚えていて常に気にかけてくれます。素晴らしいコーチであり、素晴らしい人間です。再び彼と一緒に同じ目標に向かっていけることに喜びを感じます」
来日するまでにレニーHCと連絡は。
「軽く話をして、レンズからチームに1日も早くフィットし、神戸ラグビーに適応してほしいと言われました。また、レンズが言っていた通り神戸スティーラーズはクラブハウスやグラウンド、トレーニングジムなど施設が充実していて、才能豊かな選手ばかり。このチームでラグビーができることが本当に楽しみですね」
神戸スティーラーズの試合は見たことがあるのでしょうか。
「昨シーズンの試合動画をいくつか見ました。レンズの目指すラグビーはだいたい理解できています。もちろん、チームも選手も違うので、グラスゴーの時とは異なるところはあると思いますが、1日も早くシステムを理解してチームに貢献できるようにしていきます」
どういうところでチームに貢献しようと思われていますか。
「セットプレーの安定感と強さが私の持ち味です。セットプレーやコンタクトの局面で力強いプレーをして、チームを勝利に導きたいと思います。また、オフフィールドでは、これまでさまざまな経験をしていますので、若い選手の成長を助けることができればと。チームメイトとコミュニケーションを取るには、言葉が大事になってきますので、日本語も勉強していきたいと思います」
チームにコミットすることに全集中!
フッカーには、ターナー選手と同い年で日本代表の経験もある北出 卓也選手、今年初めて日本代表に招集された松岡 賢太選手、北出選手と同い年の牛原 寛章選手がいます。
「同じポジションに良い選手がたくさんいるということはチームにとって喜ばしいことです。お互いに競争心を持ちながら切磋琢磨することはチームにとって良い影響を与えます。ただ、私の中では彼らはライバルというよりもチームメイト。私は常にチームのために何ができるか、どれだけ貢献できるかを考えていますので、彼らがアドバイスを求めてきたら教えますし、逆の場面もあると思います。お互いにチームメイトとして助け合いながら、高め合っていきたい。それが結果的にチームのためになりますからね」
今シーズン、ディビジョン1に昇格した浦安D-Rocksは、スコットランド代表でチームメイトだったグレイグ・レイドロー氏が新たにヘッドコーチを務めることになりました。
「日本に来る前、彼と連絡を取り、日本での生活について話をしました。彼の指揮するチームと対戦できたら楽しいと思いますが、まずは私自身がレンズをはじめとするコーチ陣にアピールして、リーグワンの試合に出られるようにしないと。彼は日本で大変人気があったと聞いていますし、私も神戸スティーラーズで多くの試合に出て、彼のように人気者になれるよう頑張ります(笑)!」
ターナー選手は2019年と昨年開催されたラグビーワールドカップに出場されています。自身にとって3度目となる大会出場を目指しているのでしょうか。
「今は先のことは考えられないですね。神戸スティーラーズでプレーすることに集中していますし、チームにコミットすることしか考えていませんね」
スティールメイツから応援されるに値する選手に
チームは2018-19シーズン以来のリーグ優勝を目指しています。ターナー選手は、冒頭で話されたようURC2023/24で初めて優勝を経験されました。この経験を通して優勝するためには何が大切なのか等、わかったことがあれば教えてください。
「URCは長期間にわたる戦いになりますので、選手全員に出場機会が与えられました。そこで、選手一人ひとりが自分の役割を理解し100パーセント全うしたことが勝利につながったのだと思います。また、コーチ陣、リーダーグループ、そして選手がこれまで以上にコミュニケーションをよく取り合ったことで、全員が同じ絵を見ながらラグビーができ、そのままファイナルまで走り抜けることができたことも良かったです。改めて全員が同じ絵を見て目標に向かってハードワークすることや与えられた役割を全うすることの大切さに気づかされました」
南アフリカのブルー・ブルズとの決勝ではターナー選手は途中出場しトライを決めました。
「シックスネーションズで怪我をしてしまってプレーオフから試合メンバーに入りました。準々決勝で南アフリカのストーマーズを倒してからチーム全体に自信がみなぎり、勢いに乗っていくことができました。決勝もタフなゲームになりましたが、全員が自分の役割を果たしながら良いパフォーマンスを発揮した結果、勝利することができて。本当に最高の瞬間になりました」
次は神戸スティーラーズでリーグワン優勝ですね。
「達成できるように全力を尽くします!神戸スティーラーズでプレーするチャンスをいただいたので、1試合でも多くの試合に出場し勝利に貢献できるようにしたいですし、オフフィールドでもチームがひとつになれるよう働きかけていきたいですね」
いつも神戸スティーラーズを応援してくれているスティールメイツへメッセージをお願いします。
「スティールメイツの皆さん、こんにちは。神戸スティーラーズの応援は熱狂的だと聞いています。日本でプレーすることは私にとって夢のようなことですし、皆さんから応援されるに値する選手になれるよう、しっかり準備を進めていきます。皆さんと会える日を楽しみにしています!」
一見怖そうな(笑)雰囲気のターナー選手ですが、同じポジションの北出 卓也選手は彼の第一印象を“明るくて、よく喋る人”と話していました。その言葉通り、インタビューでは時折、冗談を織り交ぜながら、笑顔でいろいろな話をしてくれたターナー選手。ラグビーワールドカップ2019日本大会で来日し、すっかり日本が好きになったそうで、お気に入りの日本食はラーメン、お寿司だとも教えてくれました。今後は大阪に行き、インターネットで調べた「たこ焼き」「お好み焼き」などの名物グルメにもチャレンジしてみたいとか。リーグワンでプレーすることを切望していたターナー選手が、いったいどんなプレーを見せてくれるのか。さらに、この夏、日本代表に初招集された伸び盛りの松岡 賢太選手をはじめとするフッカーの選手たちとのポジション争いにも目が離せません!